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ネクロマンサーに、恋をする  作者: 暁カンナ
躍動 シャイア王国編
19/30

第19話 初めての試合

すみません、18話と19話がかぶっておりました。

ご指摘いただき、ありがとうございます。


20話であった物を19話として公開いたします。

予約投稿なので、みのがしておりました。

 


 

「まあ初戦だ、気楽に流してこいや。そのかわり、負けたら帰ってこなくていいぞ。そうそう、負けてもその相手がもし最後優勝したら、またいれてやらあ。」

「レン君、負けちゃダメよ。軽~く、勝って来てね。」

そんな二人のにっこりと笑った冷酷なプレッシャーを背に、漣はベルンハルト邸を出て碧の旅団のギルドハウスに向かった。


ギルドハウスに入ると、エミリア、ファナ、それと今日出場するイーリスに相棒のファビオラと皆そろっている。

「レン、来た。」

「レン、今日は軽~くいっちゃいなさいよ。」

エミリアがエレナさんと同じプレッシャーをかける。結構こっちは緊張しているのにとため息をつく。まあ、試合なら剣道で慣れていると言えばそうなのだが、なんせ観客の人数が桁違い。緊張しない方がどうかしている。


「ようレン、今日は軽~くいっちまおうぜ。」

この人には、プレッシャーは無縁のようだ。

「イーリスさん、全然緊張してませんね。」

「あたりまえよ、まだ初戦だぜ。強い奴とは当たんないさ。これが決勝トーナメントとかだと、わくわくしてくんだけどなぁ。」

「レン、ちょっと。」

ボドウィックがレンを片隅に呼び出した。手に何か持っている。

「レン、お前は大会の間これをかぶっていろ。」

ボドウィックが差し出したのは、薄い金属製のヘルメットだった。なぜ?疑問を感じた漣がボドウィックを見返すと、

「フードをかぶったままでは試合は出来ないだろうし、その髪をさらすのはちょっとまだまずい。とにかくこれで隠して試合をしろ。」

漣はアーロンの言葉を思い出した。

『あまり人前でその髪を見せない方がいい。』

普段はフードをかぶるのが習慣になっていたので忘れていたが、確かに試合の時までかぶることはできない。

「ありがとうございます、使わせてもらいます。」

「ああ、もう返さなくていいぞ、持っとけ。」

そう言って再びみんなの所に戻る。

「さあ、みんなそろったことだし、行ってこい。」

ボドウィックの力強い言葉に押されてギルドハウスを後にする。その日はイーリスの試合が先で、レンの試合は後の方だった。



「レン、お前の相手はオマールっていう双剣使いだ。サンドラインのとこの奴で、たいしたことない。あたしとの稽古覚えてっか?」

そう、漣はトーナメント表が発表になってからイーリスに稽古をつけてもらっていた。何しろ双剣使いとは初めてだった。この世界で一番よく使われる獲物は片手剣だ。シールドを併用する者が多いが、片手剣が圧倒的に利用者が多い。その次は両手剣。ここまでは結構数がいる。しかし、長槍、短槍、双剣、レイピアなどはどっちかいうと少ない。そう言った相手とやる機会は限られ、当然一番よく練習する相手の中で、そんな獲物を使う者はあまりいない。

そんな訳で、1回戦の相手が双剣使いと分かった時点で、同じギルドの双剣使いのイーリスに稽古を頼んでいたのだ。


「大丈夫ですよ、きっと。イーリスさんにぼこぼこにされましたから。体が覚えています。」

「でも、お前も初めてにしては結構動けてたぞ。あたしも大分取られたしな。こんどやったら、負け越すかもしんねえ。」

そう、稽古にあたって意外な事に双剣と初めて対戦する漣も、なかなかいい成績を残していた。7:3でイーリスの勝ちくらいであったが、その事は今日の自身に結構繋がっている。

「初戦、応援してます。」

「おう、あたしの相手は槍使いみたいだがな。」

そう言って、豪快に笑う。奇麗な人なのにな。アプリコットの髪、茶色の目、背もすらっと高く、鼻筋も通っているちょっと宝塚の男役っぽい。ただ胸は少々あれだが、その豪快すぎる性格はちょっぴし残念美人だ。でも漣は結構かわいがってもらっており、ファビオラと共に漣の中では結構ポイントは高い。

「レン君がんばってね。勝ったら又ギュッとしてあげる。」

空気呼んでないなぁ、やっぱりこの人もちょっと残念美人だ・・・そうファビオラのことを思って顔を上げると、

「この変態、スケベ。又いやらしい顔をしてる。」

「変態。」

またシベリアのような、冷たく凍てついた光景が広がっていた。


いったん観客席に行き席を取り、当日の選手登録をしに行く。登録を済ませると、イーリスの試合を見るため再び観客席へ。イーリスの試合は第一試合だった。対戦相手は長槍使い。得物の長さのハンディをイーリスがどう凌ぐか興味があった。

席にたどり着く。幸いまだ試合は始まっていない。

「間に合ったよ。僕は第8試合、最後の方だ。」

「さあ、イーリスが出て来たわよ。」

エミリアの言葉に会場を向くと、選手二人とも会場に入って来ている。

「さあ、しょっぱなから今日のメインイベントだ。ご存じ碧の旅団の双龍姫、その片割れのイーリス嬢だ。なんと前々回大会の3位タイトルホルダー。前回は惜しくも決勝トーナメントで敗れましたが、その実力は折り紙付き。」

「対戦相手は、何と聖王国騎士団所属の長槍使いパブロ。ここで破れては、聖王国に帰れません。騎士のプライドをかけての戦いです。」

またまた無責任な司会に続いて、試合は始まった。


射程の長いパブロは当然距離をとろうとするし、イーリスは自分の距離にするため接近戦に持ち込まなければならない。イーリスは果敢にパブロに突っ込んで行く。イーリスの防具は、肩当てや、胸の一部に金属の薄い板を使っているが基本的に皮素材に対し、パブロはフルメタルとまではいかないまでも、それに近い鎧を身に着けている。動きの素早さでイーリスが勝るのは比べるまでもない。

それでもパブロは槍をうまく繰り出して、なかなかイーリスを近づけさせない。突然パブロが石附の方でイーリスの足を薙ぎ払い、それをさけようと後ろに下がったイーリスに対し大きく槍を突き出した。漣はあっと思ったが、イーリスの攻撃が始まったのはその瞬間からだった。


パブロの突き出した槍を体を反転しながら可憐によける、と同時に右の剣でそれを跳ね上げ左を鎧の上から胴に叩き込んで行く。と思うとそのまま又体を回転させ、間合いを開けず連続して剣を繰り出して行く。その姿はまるで舞を舞っているかのようだ。カン、カンと鎧に当たる高い金属的な音が会場に連続して響き、イーリスの舞いに華を添える。次第にパブロの動きは遅くなっていき、最後、鎧の隙間から、イーリスの剣がパブロの首をとらえたとき試合は止められた。

イーリスの鮮やかな勝利だった。


「凄い。」

試合の決着がつくまで、漣は声も出なかった。それほどイーリスの動きは華麗で美しく、強かった。

「稽古の時とは動きが全然違う。」

「まあ、あれはイーリスしか出来ないからね、今日のレン君の相手の人はきっとあんな動きはしないわよ。」

ファビオラの言葉に漣も納得する。自分は単に練習の相手をしてもらっていただけと言う事を。

「さすが、イーリスね。強いわ。」

「イーリス、強い。」

二人も感服したようだ。漣もさすがに気持ちが高ぶって来た。なんせ、こんな試合を見せられたら下手なことはできない。ぐっと右手を握りしめる。

「それじゃ、そろそろ行きます。」

「うん、がんばって。」

「負けんじゃないわよ。」

「勝って。」

みんなの声援を背に受けて漣は控え室へと向かう。とにかく勝ちたい!!今までにないくらい漣はそう願った。




漣は今出場者の控え室で、一人座っていた。意外な事に、緊張はしていない。それよりむしろ、これからの事が非常に楽しみである。早く始まらないか、漣は無性に待ちわびていた。

やがて足音が漣の控え室の前で止まる。そして扉が開かれた。

「レンさん、時間です。」

呼びに来た案内係の後を付いてレンは部屋を出た。使う得物は事前に選んでいる。両手剣を使う事は事前に知らせていたので、大会側は何種類かの刃をつぶした両手剣を用意していた。その中で漣は一番幅広で長い、普段使っているのに近いそれを選んでいる。そしてそれは既に背にしょっていた。


薄暗い石造りの廊下をしばらく歩いていくと、突然辺りは真っ白一色になり、次第に視界が戻ってくる。通路を抜け、闘技場の中に入ったのだ。

それと同時に、鈍い低音のような音の波が四方八方から押し寄せてくる。やがてそれはいろいろな言葉の塊となり漣の耳に届いて来た。

ブルブルと体が震える。肩を回す。よし、緊張はしていない。いける。


「さあ、あと残す所2試合となりました。今度の試合は、大会初参加のレン・ミドウです。碧の旅団所属、しかも彼はあの剣聖ベルンハルトの弟子。ベルンハルトは今まで弟子を取ったことがありません。しかしその彼が取った初めての弟子、一体どんな戦いを見せてくれるのでしょう。」

「対するは同じローランの傭兵団サンドライン所属のオマール。同じローラン傭兵対決になってしまいました。双龍姫のイーリス嬢と同じ双剣使いの彼はレンの大剣に対し、どんな動きを見せてくれるでしょう。注目の一戦です。」


審判のはじめの合図と共に両者は前にでた。会場の中央でともにぶつかる。両手剣と比べると遥かに軽い双剣の動きは、通常ならレンの大剣をその動きにおいて遥かに上回る、はずであった。しかしレンは相手の双剣の打ち込みをことごとく大剣ではねのけていた。それでもまだ漣にとっては、今大会初試合のため様子を見ている所だ。

相手のオマールは最初の打ち込みが終わった所で、少しあせっていた。なんせスピードが命の双剣の動きに、あのでかい幅広の剣でことごとく付いて来ている。しかもまだ向こうから積極的な攻撃はしてきていない。

「お前、ベルンハルトの弟子なんだってな。」

距離をとった相手が突然話しかけて来たので、漣はびっくりした。しかし決まり事が分からぬため、それには言葉を返さないで無視をする事にする。

「そんなに振り回して、当たるのかい?弟子じゃなくって下働きじゃないのか?」

そう言うと同時に相手は再び突っ込んで来た。左でこちらの剣をそらし、右で打ち込むつもりだ。漣はイーリスとの稽古でそのくらいの動きは読めていた。

右へ一歩踏み出す。集中していると、相手の動きが遅く感じられる。まるで弓道で会に入った時、的が大きく見えてくるのと同じだ。意識の片隅でぼんやりそんなことを考えながら、漣は体を沈み込ませ左手の剣を避けると一気に体を跳ね上げ下から袈裟懸けに相手の胴を打った。


オマールの体は一瞬宙に浮き、両手に持った剣は二つとも弾き飛ばされ、体はもんどりうってそのまま動かなかった。


「決まった、カウンターだ!!一瞬の出来事でした。レン選手の勝利です!!」

司会の声をぼうっと聞きながら、勝ったのか?漣にはあまり実感がなかった。案内係がまた出て来て、漣を会場の外へと連れて行ってくれる。

明日の試合の手順を聞いてからやっとレンは試合が終わった事を実感することができた。みんなの所に戻ろう、漣はエミリア達の元へと向かった。


「おめでとう、レン!!一撃ね。」

「レン、勝った。」

「よっしゃ、よくやったぞ!!」

「レン君、えらいよ~。」

みんなの歓声を一身に浴びる。最後の試合が始まっているのに、誰も見ていなかった。

「これでうちはみんな一回戦突破だな。結構、結構。」

「イーリスさん、その言い方おやじくさい。」

「いいじゃないか、帰って呑もうぜ!!」

「明日があるから、遅くまではダメですよ。」

「レン、固い事いうなよ~。」

そうやってギルドハウスまで帰ると、もうそこで宴会が始まっていた。


「よう、レン、良くやったな。圧倒的だったって?サンドラインの奴ざまあみろだ。」

リックが肩を組んでくる。もう結構酒臭い。

「リック、良くやった。イーリスも。二人とも明日もがんばれよ。」

ボドウィックが声をかけてくる。その後ろで、フェリシアもうれしそうにニコニコと笑っている。本当は少し心配していたのだろう。

そうやってみんなの祝福を受けるのが一段落したとき、ずっと壁際にもたれかかってていた一人の人物が、静かに漣の所にやって来た。

「レン、久しぶり。強くなったな。」

「アーロン!!」

久しぶりの再会であった。それは漣がこの世界に落とされた時からずっと導いて来てくれた漣の師、アーロンだった。

「どうしてここへ?」

「分かれるとき、武闘大会の頃には行くって言ったろう?忘れたのか?」

そう、生活のあまりにも急激な変化でレンはその事をすっかり忘れていた。それどころか、アーロンと過ごした日々の事もあまり思い出すことはなく、もちろん、アーロンしか知らないあの秘密の事もその力もレンはすっかり頭から抜け落ちていた。それがアーロンの顔を見たとたん、突然頭の中に蘇ってくる。


ネクロマンシー、アーロンと分かれてからレンはその力を使う事は全くなかった。持ち前のパワーやスピードで剣士として十分な力量となっている漣にとって、その剣の腕だけで今まで乗り越えて来れないような事態はなかった。

今の自分にとってアーロンと過ごしたあの日々は、まるでかすかに残る記憶の中だけの存在で、ましてや夢物語のようなあの力と比べると、剣や通常の法術の方がよっぽど現実的だった。


「アーロン、今日の試合見てくれた?勝ったよ。」

漣はアーロンの姿を見て、まず何よりもこの男にそれを喜んでもらいたかった。

「ああ、いい試合だったな。圧倒的だ。強くなったな、漣。」

それから漣は、アーロンと分かれた後の事を事細かにアーロンに話していた。特にルゼールへの護衛任務の時の話はしっかりとアーロンに聞いてもらいたかった。

「それじゃ、お前は克服できたんだな。」

「うん、だから今、ベルンハルトのところにいる。もっと強くなりたい。ならなくちゃいけない。」

「それはいいが、あまり思い詰めるなよ。まだこっちのお前は始まったばかりだ。」

そう言ってくしゃくしゃと漣の頭を撫ぜる。あの頃と同じだ、漣は何もかも懐かしかった。


「ところでレン、あれから使ったか?」

アーロンは突然真面目な顔をして漣に向かい合った。漣は今まで全く使っていない事、それどころかその力の存在自体忘れてしまっていた事、もう使えるのか自身がない事を話した。

「本当は、時々動物でもいいから練習をしておいた方がいいのだけどな。」

しかしここはあの村と比べると都会だ。どこにでも人の目があり、周りには漣の力の事は伏せられているため、一人で練習する機会などない。ましてや練習には何かの死体を用意しなければならない。

「ここでは難しいな。」

アーロンもその力の性質上、それが困難な事は分かっていた。

「とにかく、武闘大会はがんばれよ。お前なら、きっといいとこまで行けるさ。」

そう言うと、アーロンはボドウィックと話すため立ち去っていった。漣も何か疲れを感じていた。そろそろ、ベルンハルトに報告もしないと行けないし、帰るか。そう思っていると突然腕を捕まえられる。

「レン君、おめでとう。凄かったわね。かっこ良かったわよ。」

当たってます、当たってますって。レンはファビオラにそう言いたかったが離してもらえそうにない。

これはもしかして、お約束か?そう思って前を見ると、案の定冷たい視線を送る二人が、

「すけべ。」

「変態。」

ベルンハルトの所に帰る前に、相当の弁明の時間を二人に取られた漣であった。


ベルンハルト邸に着くと、もうベルンハルトとエレナは杯を空けていた。

「よう、帰ったな。」

「おめでとうございます。」

「ありがとう、エレンさん。」

「先生、何か訳分からないうちに終わっちゃいました。」

「まあ座って、一杯いけ。」

そう言って漣にもグラスを持たせてくれる。

「まあ取り合えず、乾杯だな。」


そして漣は二人と一緒にグラスを傾けた。今日の一日、やっと落ち着いた気がする。初めての大会出場、初めての大観衆、そしてその中での初めての主役。

漣は少し興奮気味に二人に今日のことについて話しだしていた。いつの間にか試合は始まっており、相手の剣に対し最初は体が勝手に動いていたこと。イーリスの動きに比べると全く問題なく付いていけ、それより集中していた時相手の動きが妙に遅く感じられた事。

ベルンハルトとエレンは、そんな漣の様子を嬉しそうに見つめていた。

そして静かに、杯だけが何度も重ねられていった。




その頃シャイア王国王宮でも王宮の一角で親しい者だけを集めたパーティーが執り行われていた。


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