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ネクロマンサーに、恋をする  作者: 暁カンナ
躍動 シャイア王国編
14/30

第14話 盗賊団

 

 

次の日はどんよりとした曇り空だった。視界も悪く、朝から隊商の士気はめいいっぱい下がっている。

「視界が悪い。こんな日は襲撃があるかもしれん、気を抜くな。」

カールの声と共に、一行は出発した。今日から道は山道。これから3日間ほぼ山の中を行くことになる。道は細く、視界は悪い。そしてここからが、いわゆる盗賊多発地帯だった。


「これはこれで、息が詰まるわね。」

「少なくとも、景色はいまいちだな。」

今日も又後衛をまかされているが、後ろを見ても見えるのは岩肌ばかり。動物の一匹も見当たらない。

山岳地帯と言ってもこの辺りは森は少なく、赤茶けた岩肌ばかりが辺りを覆っていた。


「夕べの事だけどさ、レンは家族はいるの?」

エミリアが、少し寂しそうに聞いてくる。

「ああ、凄く遠くにだけど。両親と妹が一人。妹みたいなのがもう一人。でも、多分もう会えない。」

「なんで?帰れば会えるでしょ?」

「多分もう帰れないんだ。」

「何かまずいことやらかして、国を追われたんでしょ?スケベな事とか。」

「そのころまだ14歳だよ、何をやるのさ。」

「あんただったら分からないわよ。」

そう言って、エミリアは悲しそうにつぶやいた。


「私は帰るとこないからなぁ。まあ、ここが故郷みたいのものよ。」

そうか、エミリアは戦争の小競り合いで、家族を亡くしたんだ。昨日の話では分からなかったが、そう言う事かとレンはピンときた。


「今はみんなが家族みたいな物でしょ?僕もそうだよ。」

「ええ、まあそうね。ありがとう。」

「ファナはどこかに家族いるのかな?」

「あたしも知らないわ。あの子自分の事絶対話そうとしないから。」

なんかファナらしい。そう言えば自分も聞いた事なかったな。今度ダメ元で聞いてみよう。漣がそう思った時だった。


左の崖の上に、何か動く物が見えた気がした。

「エミリア、あそこ。」

「えっ?なに?」

「あの上で何か動いた気がするんだけど。」

そう言って再び見ても、そこには何も見当たらない。

「何か獣でもいたんじゃないの?」

結局その日はそれ以上何もおこらなかった。漣達は今までの通り少し開けた場所でテントを張り、次の日に備えた。


翌日もまた、同じような曇り空だった。漣達一行は昨日と同じような景観の道のりを進んでいた。

先頭はカールとリック、後衛にエミリアとレントン、3台の馬車の間には前にファナ、後ろに漣がそれぞれ詰めている。

今日は隣に誰もいないため、漣は黙々と馬を進めて行く。やがて一行は両端を高い崖に挟まれた谷間に通りかかった。


馬車2台がギリギリ擦れ違いが出来ると言うくらいの幅の谷間も、半ばを過ぎた辺りであった。ふと漣は、左手の崖の上に何か動くものを見た気がした。

又、獣か何かか?そう思って、進行方向に向き直った時だった。


目の前で突然矢が髪の毛をかすめ、右手の岩に当たり跳ね返った。それと呼応して、幾本かの矢が左の崖の上からとんでくる。

「敵襲!!盗賊だ。そのまま駆け抜けろ。」

カールの声が聞こえ、馬車は速度を上げた。後もう少しでこの谷間を抜ける。カツッ、目の前の馬車に矢が突き刺さる。それでも馬車は勢いを止めない。そのまま馬車は勢いを付けて、谷間を抜け出した。


「待ち伏せだ!!」

リックの声が上がる。目の前には扇状に約20名くらいの盗賊達が群れをなしている。

「矢で牽制だ、馬車を横に向けろ。」

漣も馬車の陰に隠れ、矢を射る。足を狙えば、殺すことはない。漣が3名ほどの足を射抜いた所で、矢が尽きたか睨み合いに飽きたのか刀を振りかざし、どっと盗賊達はこちらに駆け寄って来た。


「アイスアロー!!」

隣から声が聞こえ、3本の氷の矢が近距離から敵を貫き、赤い血がほとばしる。

「法術師がいるぞ!!先につぶせ!!」

接近戦となれば、ファナは不利だ。漣はファナのもとに駆け寄り、今しもファナに切り掛かろうとした男の刃を受け止めた。返す刀で男の胴を薙ぐ。男は、後ろに撥ね飛ばされて動かなくなった。しかしその体からは切った証である血は流れ出てこない。


「レン、その剣、、、」

そう、この任務に当たって連は刃をつぶしてある練習用剣を持ち込んでいた。もちろん人を殺さないようにする配慮である。自分はある程度剣の腕は立つ。それならば、きっと刃をつぶした練習用の件でも渡り合えるはずだ。練習用とはいえ、立派な鉄のかたまりだ。殴りつけられれば、ただでは済まない。


「大丈夫、これでいける。」

そう言って連は次に襲って来た男と刃を交える。屈強な体をした男は両手剣使いで、そのパワーは半端ではないが連は練習用片手剣をうまく斜めに当て、その力を逃がして行く。

「アイスアロー!!」

隣ではファナが詠唱省略でまた二人ほど敵の喉を氷の矢で貫く。


商隊の先頭ではカールとリックがそれぞれメイスと剣をふるっていた。リックのダガーは8割かた投げ尽くしており、倒す所までは行かなかったがそれなりに敵の動きを封じていた。


「御者は中に入れ。リック、後ろに回らせるなよ。」

「分かってるって。」

そう言って、後ろに回ろうとした盗賊にダガーを投げ牽制する。

「しかし、こっちの3倍強か。ちょっと苦しいな。」

そう言いつつも、確実に一人の賊にそのメイスを振り下ろす。まともに正面から当たった賊はその剣を手から弾き飛ばされ、胸を大きく打たれて後ろへ弾き飛んだ。


レントンは弓で2人射倒した後、得意な長槍に持ち替え敵を屠っている。エミリアとレントンは4人の賊を相手にしていた。

賊の一人が女は組みやすしと見たか、エミリアに打ちかかった。それを左手に持つマンゴーシュで受け、右手のレイピアで相手の肩を付く。エミリアの一閃は肩口にはいったが傷は浅かったのか相手はそのまま下がり、身構える。


レントンの方はこちらの方が獲物の射程が長いためか、様子をみてなかなかかかってこない。ならこちらから行くまでと石突きで相手の片手剣を跳ね上げ、そのまま下から切り上げる。槍の穂脇はそのまま相手の胸を切り裂き、血がほとばしる。しかし今ひとつ浅かったのか、相手は戦意を失っていない。


「今度はこっちから行くわよ」

エミリアはそう声を上げ、まだ無傷の方の相手に突きかかった。相手は片手剣を振り回して対抗するも、エミリアのレイピアのスピードには付いて行けず、大振りの一撃を外され中に入られたエミリアに胸を一突きされどうと仰向けに倒れる。




漣は両手剣を持った大男に苦戦していた。まともに打ち合えば剣を飛ばされるのは明らかな上、ファナを守りながら戦うと言うハンディもある。おまけに相手の体を少々打ち付けた所で、相手はいっさいひるまない。


「なんだぁ、その剣は。なまくらか?」

そう言って大上段から打ち下ろしてくるのを、転がってよける。そのまま掴んだ土塊を相手の顔めがけて投げつけた。

「うわっ!!」

目のつぶれた相手に、そのまま打ち掛かって行こうとした時だった。


「きゃっ!!」

悲鳴が後ろで上がる。あわてて振り向くと、ファナが弦の切断された弓を持って後ろに崩れ落ちた所だった。その肩口からは血がにじんでいる。ファナを切り倒した男は、先ほど漣が打ち据えて動かなくなっていた盗賊だった。男はそのままとどめを刺そうと、ファナの上に剣を振りかざした。


「ファナ!!」

ドクン!!ドクン!!あの時、俺がまともな剣を使っていたら、あのとき俺が男を殺しておけば、ファナは、ファナが死ぬ、、、


「うわぁ!!!」

そのとたん、漣は自分が大きな声を出しているのに気づかなかった。何も考えられなくなり、気がついたら手にもっていた練習剣を男に投げつけていた。そして、ファナの元に走る。知らぬ間に背中の大剣を片手で抜き放ち、そのまま男に向け振り抜く。


男はほぼまっぷたつになりながら血をまき散らし、後ろへちぎれとんだ。そのまま、返す刀で今まで対していた大男の両手剣を下から弾き飛ばし心臓へ突き入れる。

それから漣は走った。ほとんど片手だけで、次ぎに攻め込もうとしていた男の槍をはね飛ばし、そのまま首を断ち切る。


「うをぉ!!」

意味不明の言葉を叫びつつ、突っ込んで来た盗賊の剣を両手で受け跳ね上げ、片手で胴を薙ぐ。逃げようとした盗賊に追いすがり、背中から袈裟懸けに切り落とす。気がつくと、辺りに敵の姿はなかった。


ハァッ、八ァッ、ハァッ、息が苦しい、剣が重い、手が開かない。漣は両手剣を杖のようにして体を支えていた。


「レンっ!!」

エミリアが駆け寄る。そのとたん、漣は剣を持ったまま四つん這いになり思い切り吐いていた。食べたものはとうに出て、黄色い胃液だけを吐き続ける。いつまでたっても吐く物がなくならない、非常に激しい嘔吐感だった。


エミリアが水を差し出してくれた。漣はそれを左手で受け取り、口に含んだ。

「ファナは?」

やっと口から絞り出した言葉は、ファナの安否を聞く物だった。

「大丈夫、かすっただけよ。」

「良かった、、、」

それを聞いて、漣はがっくりと体の力が抜けた。ファナが、ファナが、その事しか今まで考えてなかった。どっと安心したとたん、今自分のしてしまった事が怒濤のように脳裏に押し寄せてくる。俺はついに人を、、、とたんに又嘔吐感がぶり返し、吐くももう黄色い胃液すら出ない。


もう一度水をもらい、漣は剣を杖のようにしてゆっくりと立ち上がった。


剣を手から離そうとするも、指が開かない。ガチガチに固まってまるで自分の指ではないみたいである。


「エミリア、指が、開かない。」

「えっ?」

そういうとエミリアは漣が言わんとしていたことがわかったのか、両手で漣の右手を持ち、ゆっくりと一本一本漣の指を開いて行く。エミリアに剣を引きはがしてもらい、漣はゆっくりと右手の指を動かしてみる。今度は、しっかりと動いた。そのままニギニギと指を動かす。


「みんなは?」

「大丈夫こっちは誰一人やられていないし、敵は半数以上倒されあきらめて逃げ去ったわ。」

「良かった。」

「レン、エミリア。」

そこへ前からリックが駆けて来た。


「大丈夫か、お前ら。」

「ええ、ファナが肩に傷を負ったけど、たいしたことない。」

「そうか、良かった。商隊の方はけが人は無しだ。」

「フィアはしばらく馬車に乗せろ。馬はリック、お前が引け。急いで出るぞ、奴らが戻ってこないうちに距離を稼ぐ。」

そういって、カールが御者達に指示を出し、商隊は再び出発した。漣はレントンと位置を変わってもらい、エミリアと後衛に就く。


「レン、大丈夫?」

そう言ってエミリアは漣の方を見る。漣はと言うと馬にまたがったはいいが、先ほどからずっと下を向いて一言もしゃべっていない。

結局その日は山を抜けた所で野営を行ったが、漣はエミリアやファナが話しかけて来るのに対し、終始無言を貫いた。





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