さよなら僕のパンダ
君の名前はパンダ
僕の叔母が旅行のお土産に買ってきたぬいぐるみ
僕は部屋の中、今日も窓を眺めている
窓辺はいつもパンダの指定席で、僕はベッドの上が指定席で、僕の指定席とパンダの指定席はとても近い。ちょうど僕が起き上がって背中に手を伸ばせばパンダは僕の腕の中
パンダも僕も、この部屋からは出れないけれど僕よりもいろんな所を旅しているぶんパンダの方が物知りで、僕の青い目に比べてパンダの黒い目はいつも賢そうに光ってる
僕が起きているときは、パンダはテーブルの上へ移動する
ずんぐりむっくりな体に比べて短い手足を投げ出して座る様子は可愛らしい。目が覚めたら一緒に味の薄いドロドロのお粥を食べて、三時には一緒にお茶をして過ごす
夜ご飯は少し豪華に、蜂蜜のかかったあげパンが一切れ出て、僕はそれすら食べきれずにパンダと半分こにする。そうすると、パンダは賢そうな黒い瞳をキラキラさせながら僕を見つめてこう言うんだ
「パンダは、笹を食べるものだよ」
って、だからいつも半分はこっそり、油紙に包んで明日の10時のおやつになる。その代わり僕は折り紙を丸めて作った笹をパンダにあげる
パンダは困ったように、その笹を肩にかけて僕を見つめるけど、少しすると僕は忘れて引き出しの中にあげパンをしまう
空に星が光始めると僕は目をこすってパンダへお休みを言う。ベットに潜ればすぐに夢の中で、僕はパンダに会う
夢の中のパンダは、起きてるときよりもずっとお喋りでよく動く、 僕も夢の中の方がずっと元気で走ったりジャンプしたりする。今日もパンダとおいかけっこをした、それが楽しくて僕は夢から覚めたくない、覚めたくないのに朝は来て目が覚める
パンダは今日も、起きると窓にいて僕はてを伸ばす
コツンと指先に当たったパンダは今日は指先を離れるように滑り、そして居なくなった
風が吹いて僕の顔に、あたって僕は窓に身を乗り出す。パンダは屋根の上コロコロ転がって、灰色の猫にパクリとくわえられた。そうして猫に連れられ遠くへ行ってしまう
パンダはいない
さよなら僕のパンダ