子供を辞めた日
掲載日:2011/06/12
冬の夜は乾いていた。私は湿っていた。身も心も。
私は一際明るい自販機に、さっきから握っていた初めての報酬を入れた。自販機は私の一万円札をすぐに吐き出した、「腐っている」と言わんばかりに。うぜえ、機械の癖に。
財布を開いて小銭を入れた。このお金はちゃんと飲み込んだ。コーヒーのボタンを押す、ゴトと缶が落ちる。その音で一緒に何かが落ちた気がした。
一緒だ。私はこの缶と一緒だ。私は今日、この缶コーヒーと変わりが無い物に成り下がったのだ。ただ外に出たくて、酸化したくて、価値もわからないままに自分を売ったのだ。
缶を掴む。熱い。生まれたての熱だ。この缶が私なら、自販機は母さんかな、それとも父親なのかな。どちらにしても私には似合わない明るさだと思った。




