プロローグ ――2
残酷な描写が入ります。
目を開けると、目の前には地獄が広がっていた。
「……?」
頭に浮かぶのは疑問符。
なぜなのか。
なぜ、自分の手は血にまみれているのか。
なぜ、目の前にはお父様が血だらけで倒れているのか。
なぜ、お父様は何も命令しないのか。
「……あ」
状況を理解した途端、忘れていた痛みが身体を襲った。
「ああぁぁあああぁぁぁぁぁあああああああああああああぁぁあああぁぁあぁあああああああああああああぁぁあああぁぁあぁああああああぁぁあああぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁあああぁあああああぁぁぁぁぁぁぁああああぁあああ」
叫んでも、痛みはおさまらない。大丈夫だ、そう自分に言い聞かせる。大丈夫、こんな痛みはいつものこと。落ち着け、すぐに治まる。
胸のあたりを、光がおおった。治癒魔法使用時の、独特の光だ。使い慣れたもの、のはずだった。
なのに。
「―――――ッッ!!!」
もはや叫びにすらならない激痛が、再び身体を襲う。どうして魔法が効かない……そんな悲痛に満ちた疑問には、誰も答えてくれない。
「お、とうさま……もうしわけ、ありません……」
申し訳ありません。そう言えば、救われる気がした。許される気がした。この痛みから、解放される気がした。
すでに許す者など、いないというのに。
そもそも罪など、ひとつも犯していないというのに。
「もうしわけ、ありません……」
王宮騎士団が到着したとき、幼い暗殺者は、ただそう呟いていた。
延々と、延々と。
非常に短かったかと思いますが、どうしても本編が始まる前に書いておきたかった部分なので・・・・・・
次話から、本編が始まります