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ーーepilogue 絆の一年後


 結婚から一年。

 ヒロジは〈ボー・ギャルソン〉の活動で、休む間もなく多忙な日々を送っていた。


 スタジオでは三枚目のシングル制作が大詰めを迎え、妥協を許さない小森のディレクションに応えながら、ヒロジは歌詞と旋律を磨き上げていく。

 一枚目のシングルはオリコン五位、二枚目は七位。サブスクでは三位にランクインし、若い世代を中心に人気が広がっていた。全国のフェスに出演し、観客の歓声に包まれるたび、ヒロジは確かな手応えを感じていた。


 一方サチは、日本へ帰国後、かつて働いていた〈スタジオZ〉に復帰した。

 サロンワークに励むかたわら、時折ファッションショーのヘアメイクとして声がかかり、舞台裏で忙しく動き回る日々。自分の夢にまた一歩近づいている実感に、胸の奥が熱くなる瞬間もあった。


 夫婦となった二人は、相変わらず小森所有のマンションで暮らしていた。

 休日には母・正子や、専門学校時代の親友ミカ、そしてヒロジの仕事仲間たちが訪ねてきて、リビングはいつも笑い声に包まれている。食卓にはサチの手料理が並び、音楽と笑いの絶えない温かな空間が広がっていた。



 そんなある日。

「たまには皆でリフレッシュしよう」

 小森の提案で、〈ジャスミン舎の屋上〉を使ったBBQが企画された。


 当日、サチとミカをはじめ、事務所スタッフが飾り付けや料理の準備に奔走する。

 色とりどりのガーランドが風に揺れ、テーブルには焼き野菜や肉の下ごしらえが並ぶ。グリルから立ち上る香ばしい匂いに、皆の顔が自然とほころんでいった。


「ヒロくん、焼きすぎないでね!」

「わかってるよ。これでも家庭持ちなんだから」

 周囲にからかわれ、ヒロジは照れ笑いを浮かべながらトングを動かす。

 仕事漬けだった日々が嘘のように、仲間たちと過ごす時間は穏やかで、温かかった。



 やがて陽が落ち、秋の夜気が屋上を包み始めた頃。

 突然、遠くの空に大きな光の花が咲いた。


「えっ……花火?」

「すごい! 秋に花火なんて珍しい!」


 思わず空を仰いだサチの目に、鮮やかな大輪が次々と夜空を彩っていく。近くで行われていた花火大会が、偶然にもBBQの時間と重なったのだ。


 仲間たちは歓声を上げ、手にしたグラスを掲げて盛り上がる。

 BBQの煙と花火の光が交じり合い、屋上は幻想的な舞台に変わっていた。


 ヒロジはそっとサチの手を取り、横顔を見つめながら囁く。

「こうして皆と……サチと一緒に見る花火、最高だな」

「うん……一年前は想像もしなかった景色だよね」


 サチの頬に花火の光が映え、その笑顔が眩しくて、ヒロジは胸の奥が熱くなるのを感じた。



 大輪の花火が夜空に次々と咲き乱れるなか、小森がグラスを掲げて言った。

「音楽も人生も、仲間がいるから続けられるんだ」


 その言葉に、全員が静かにうなずく。

 サチとヒロジは手を繋ぎ、夜空を見上げて誓い合った。


「これからも……ずっと一緒に歩いていこう」

「うん、何があっても」


 花火の轟音と笑い声に包まれながら、二人の未来への道は確かに続いていく。

 秋の夜空を彩る大輪の光の下で――物語は静かに、そして温かく幕を閉じた。


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