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第四九章 パリでの休日とプロポーズ


半年ぶりの休日。ヒロジは久しぶりに忙しいスケジュールから解放され、サチと人目を気にせずパリの街を歩いていた。石畳の道、カフェのテラス、通り沿いのショップやパン屋。どこを歩いても、街の香ばしいパンの匂いやコーヒーの香りが混ざり合い、五感を心地よく刺激する。


「パリって、やっぱり特別な街ね……」

サチが柔らかく微笑みながら、店先のクロワッサンに目を向ける。


「そうだね。サチと一緒に歩くと、どこも特別に感じる。」

ヒロジはサチの手をそっと握り、自然な笑顔を見せた。街角で遊ぶ子どもたちや通りを行き交う観光客を見ながら、二人の間に柔らかい時間が流れる。


二人はルーブル美術館へ足を運んだ。美術館内は静かで、絵画や彫刻を鑑賞する人々の息遣いと足音だけが響く。サチはモナリザの前で立ち止まり、小さな声でつぶやいた。


「モナリザの笑み、やっぱり不思議……」


ヒロジはサチを見つめ、穏やかな笑みを返す。

「本当に、いつまでも見ていられる。サチと一緒にいると、こんな時間が永遠に感じるよ。」


サチが絵の前で小さく手を握る仕草を見て、ヒロジは自然にサチの手をそっと取り、二人の距離感が密やかに縮まる。


美術館を出た後は、シャンゼリゼ通り沿いのカフェでランチ。テラスに座り、フレンチトーストとカフェオレを楽しみながら日常や未来の話題に花を咲かせる。


「パリって、来るたびに新しい発見があるね」

「サチと一緒だから、どこでも特別になるんだ」


サチは笑いながらヒロジの肩にもたれかかる。カフェの香り、通りのざわめき、通行人の声が二人の背景に溶け込み、日常の中に静かで穏やかな幸せを描き出す。


食事を終えると、二人はパリの街並みを歩きながら、自然とパリの老舗デパート、ギャルリー・ラファイエットへと足を向けていた。

 ドーム型のステンドグラスの天井から降り注ぐ光に、サチは思わず足を止めて見上げる。


「……わぁ、すごい。ここだけ別世界みたい」

「だろ? 俺も最初見た時、口あけてしばらく動けなかったよ」


 ヒロジが笑いながら横に立ち、サチの視線の先を見上げる。豪華な空間の中を抜け、二人はアニエスbのショップへ。シンプルで洗練されたディスプレイが並ぶ中、サチの目は自然と一つのカーディガンに吸い寄せられた。


「これ、かわいい……。でもちょっと大人っぽいかな」

「サチには似合うと思うけどな。着てみれば?」


 ヒロジの言葉に少し頬を赤らめながら、サチは試着室へ。鏡の前に立つと、落ち着いた色合いが彼女の雰囲気を一層引き立てていた。


「……どう?」

 カーテンを開けて出てきたサチに、ヒロジは一瞬言葉を失い、目を細める。

「……似合いすぎて、俺がドキドキしてる」


 サチは照れ笑いを浮かべて肩をすくめる。

「もう……そうやってすぐ言うんだから」


 彼女がそっとカーディガンの袖口を撫でると、ヒロジは店員に合図をして「je prends ça(これ下さい)」と即決した。


「ちょっと! まだ買うって決めてないよ?」

「いや、決まり。今日の思い出のひとつにしよう」

「……ありがとう。大事にするね」


 二人は包みを受け取り、再び大理石の床を歩き出す。ガラス越しに見えるパリの街並みが、二人の新しい思い出を作っていく。そして二人はセーヌ川沿いをゆっくり歩き始めた。川面には夕暮れのオレンジ色の光が反射し、静かに流れる水面がパリの街並みとともに幻想的な雰囲気を作り出している。


ヒロジは少し緊張した表情でサチの目を見つめ、静かに言った。

「サチ…僕が一生君の事守るって言ったら?君は嬉しい?」


サチは一瞬驚き、そして心からの笑顔で答える。

「はい、喜んで!」


川沿いのベンチや街灯、通行人の声、ボートの水音……視覚と聴覚でロマンチックな雰囲気が増す中、二人の世界は時間を止めたかのように静かに輝いた。サチがヒロジの目を見つめ、ヒロジの胸に小さく身を寄せると、言葉以上の安心感と幸福感が伝わる。


夕暮れのセーヌ川沿いでヒロジがサチを抱き寄せる。そっと唇を重ねる二人。川面に反射する光と街灯の灯りが、二人を柔らかく包み込む。背景には小舟が静かに流れ、橋のライトが水面に反射して幻想的な空間を演出する。


「ずっと一緒だよ」

「うん、ずっと……」


サチがヒロジの胸に顔をうずめ、二人の影が川面に揺れる。五感すべてにパリの空気と幸福感が満ちる、永遠の一瞬のようなロマンチックな夜になった。

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