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第四八章 半年後のパリでの再会


半年の時が流れた。ヒロジの最新シングル「月影の旋律」はオリコン8位を記録し、トップアーティストの座に駆け上がろうとしていた。小森武の指導のもと、二曲目の制作も順調に進み、スタジオには緊張感と期待が漂っていた。ヒロジはギターを抱え、何度もフレーズを弾き直す。傍らで小森が的確なアドバイスを送る。「ここはもっと伸びやかに歌え。感情を曲に乗せろ。」


一方、フランス・パリで暮らすサチは、慣れない土地で美容師見習いとして奮闘していた。毎日石畳の街を歩きながらカフェの香りや街のざわめきに触れるたび、新しい生活への期待と同時に孤独を感じていた。お客さんとのコミュニケーション、言語の壁、仕事のプレッシャー……少しずつ心の疲れが溜まっていた。


ある午後、ヒロジの携帯が鳴った。画面にはサチの母・正子の名前が表示されている。


「宮村くん…久しぶりね、実はサチの様子を少し心配してね。私は行けないから、あなたが私の変わりに行って励ましてあげてくれないかしら……」


電話越しに聞こえる正子の声には、深い思いやりと少しの切なさが滲んでいた。ヒロジはサチのことを思い浮かべ、胸が熱くなる。


「分かりました。僕が行きます、必ず。」


サチの様子について正子は詳しく話した。自分の前では明るく振る舞うが、電話での会話では本音を言わない様子が伝わるとのことだった。ヒロジはその言葉にハッとし、すぐに行動する決意を固めた。


スタジオを離れ、マネージャーに相談する。「短期間だけですが、フランスに行きたいんです。彼女を励ますために。」

マネージャーは一瞬驚いた表情を見せたが、ヒロジの真剣な目を見て頷いた。「わかった。数日だけなら調整できる。気をつけて行ってこい。」


飛行機は夕方のパリに降り立った。空港を出てパリ市内に着くと

石畳の街路、カフェの灯り、行き交う人々の声がヒロジを迎えた。街にはフランス語が飛び交い、香ばしいパンの香りが風に混じっていた。

ヒロジはすぐにサチの働く店・Veranに電話をかけた。

「Oui, ici Veran.」

「もしもし、宮村といいますが五十谷さんお願いします」

「あら、日本人の方ですね…スタッフの五十谷でしょうか?お待ち下さい」

ー間があくー

「もしもし…五十谷です」

「もしもし…サチ?俺、今パリにいるんだ。」

電話越しに、サチの驚きと戸惑いが伝わる。

「え……ヒロくん!? 本当に……?」

「うん。ーーー 少しだけ外に出て来れないか?」


サチは思わず小さく息をのんだ。店を早退するのは心苦しかったが、胸の高鳴りに逆らえなかった。街中を駆け抜けるサチの足取りは、焦りと期待で速まる。石畳の道を走りながら、カフェの香りや観光客の笑い声がサチの心を少し和らげる。


街角でヒロジを見つけた瞬間、サチは駆け寄り、思わず彼に抱きついた。

「ヒロくん……!」

「よく頑張ったな、サチ。」

ヒロジの声には優しさと安心感が溢れていた。サチは目に涙をため、少し笑いながら言う。「うん……でも、もう限界かと思ってたの。」


ヒロジはそっとサチの手を握る。「大丈夫。俺がいる。ここに来てくれたのは正解だ。」

街灯に照らされた二人の影が重なる。遠くにはエッフェル塔の灯りが静かに輝いていた。


「これからも、ちゃんと支えてくれる?」

「もちろんだよ。いつでも。」


再会の安堵と喜びを胸に、二人はしばし歩きながら話した。パリの夜風が二人の頬を撫で、街のざわめきとカフェの灯りが、未来への小さな希望を照らしているようだった。

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