第三三章 試練の季節
ボー・ギャルソンの勢いは徐々に失われ、事務所からの解雇通告が届いた日、スタジオの空気は重く沈んでいた。
メンバーたちは、唖然とした表情のまま机に突っ伏し、誰も言葉を発せなかった。窓の外には灰色の雲が垂れこめ、街を覆う雨がまるで彼らの心を映すかのよう静かに降っていた。
「これからどうするんだ……」
ベースの仲間が震える声で呟く。
「うーん……就職活動、かな」
ドラムの青年も重い口を開いた。ギターを抱えたまま、ヒロジは言葉を失い、ただ天井を見つめていた。
そんな彼に、先日、かつて働いていたCDショップの店長が連絡をしていた。
店長の声が頭に響く。ヒロジは唇を噛み、深く息を吐いた。
「…やっぱり戻ろうかな」
控室に戻ると、サチが心配そうに見つめていた。
「ヒロくん、無理しないで。私がそばにいるから」
ヒロジはその手を握り返す。
「ありがとう、サチ……本当に支えられてるよ」
言葉にできない感情が胸を熱くし、目の奥が潤んだ。
契約マンションの鍵を返す日、ヒロジは荷物をまとめ、サチと一緒に新しい生活を始める準備をした。
「狭いけど……二人なら大丈夫だよね」
サチは笑顔を見せながらも、少し緊張している様子だった。
「うん……二人なら、きっと乗り越えられる」
ヒロジも微笑みを返し、二人の手が固く重なる。
その後、ヒロジとサチは静かな墓地へ向かった。
ヒロジの亡き母の墓前に立つと、ヒロジはそっと手を合わせる。
「母さん、僕、まだ夢を追ってるよ……でも、怖いんだ」
サチはそっと肩に寄り添い、声をかける。
「ヒロくん、大丈夫。私がずっと一緒にいる」
墓前に落ちる二人の影が、夕陽に長く伸びる。
風が頬を撫で、遠くで小鳥の声が響いた。
――困難は訪れたけれど、二人は共に立ち上がる。
悲しみと焦燥の中でも、希望の光は微かに揺れていた。




