第二七章 揺れる想い
数日後、事務所の会議室。
ヒロジはレコーディングのため不在で、サチは少し緊張しながら社長とマネージャーの前に座っていた。
「先日の件だが……」
社長が低い声で切り出す。
「あなた、写真を撮られたことは把握しているよね?」
サチはうなずく。
「はい……でも、あれは突然で……」
その時、七瀬 結衣が部屋に入ってきた。
普段のセレブな笑顔は消え、険しい表情でサチを睨む。
「あなた! どういうつもり?この大事な時期にあんな写真を撮らせるなんて!」
結衣は声を荒げ、机を叩く。
「でも、私は……」
言い訳をしようとするサチを遮るように、突然、ビンタが飛んだ。
「なぜヒロジに迷惑をかけるの! あなたなんか、彼にはふさわしくない!」
頬に痛みが走り、サチは言葉を失った。
社長とマネージャーが慌てて間に入る。
「落ち着いてください!」
だが、サチの胸は締め付けられるように痛む。
ヒロジの未来を思うと、自分の存在が彼に負担をかけるのではないか――そんな思いが頭をよぎる。
帰り道、サチは一人で街を歩きながら、人目を気にせず涙を流す。
「……ヒロくんのためなら、私は……」
胸の奥で決意が芽生える。
ヒロジの未来のため、自分から距離を置くべきかもしれない、と。
その夜、サチは窓辺で静かに月を見上げる。
湖での穏やかな時間、カフェでの温かいひととき――すべてが脳裏に蘇る。
だが、目の前には現実の波乱が立ちはだかっていた。
「私は、どうすればいいの……」
小さく呟き、サチは深く息をついた。
未来の幸せのため、今は耐えるしかない――そう自分に言い聞かせるのだった。




