第二〇章:初披露と「月夜の散歩」
夕暮れが街を包み、ライブハウスの照明が淡く点灯する。観客のざわめきが胸の高鳴りをさらに強める中、ヒロジはギターを手にステージに立った。膝の奥でノートに書き留めた歌詞をそっと握りしめる。
「行くぞ…」
小さく呟き、深呼吸をして弦を鳴らす。バンドメンバーの目と微かな頷きが、心の支えになる。
演奏が始まると、最初は緊張で指がぎこちなく動いた。しかし、サチが客席の端でじっと見守る姿を思い浮かべると、音が自然と身体を通り抜け、ギターも歌声も軽やかに響き始めた。
今回披露する曲のひとつは、サチに向けて作ったオリジナルソング。「月夜の散歩」と題された曲は、二人で歩いた静かな夜道や、互いを思いやる気持ちがそのままメロディと歌詞に込められている。
観客のざわめきの中、ヒロジは歌う。
――「月明かりの下 君と歩くこの道
そっと手をつなげば 心がほどける
夜風に揺れる街灯 君の笑顔照らす
ただそばにいるだけで 世界が輝く」
歌詞を口ずさむたび、ヒロジの視線は自然とサチを探す。サチはステージの光の向こうで、その曲が自分に向けられたものだと気づき、胸が熱くなる。
サチが小さく声を漏らす。
「…私に向けてくれたんだ…」
ヒロジはその声を思い浮かべながら、ギターの音にさらに感情を込めた。
拍手や歓声が徐々に大きくなり、ヒロジの緊張は喜びと手応えに変わる。演奏が終わると、サチは思わず涙ぐみながら微笑み、手を振った。ヒロジも小さくgoodサインを返す。
サチはその小さな合図に安心し、目を潤ませながらもにっこり笑う。ヒロジもまた、ステージ上の熱気と自分の気持ちが少し軽くなるのを感じていた。
外に出ると、夜風が街を包み込み、二人の歩幅は自然とそろった。月明かりに照らされた小さな影が並び、未来への希望を静かに照らしていた。
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