第一七章 嵐のステージ
秋の夜空が深まる中、ライブハウスの前には観客のざわめきが溢れていた。
今日は、ヒロジのバンドにとって運命の一夜――メジャーデビューへの登竜門となる大舞台だった。
音楽関係者も多数来場し、目は自然とステージに集まる。サチも、胸の奥で緊張を抱えながら、観客席に座っていた。
「今日は絶対に成功させたい……」
ステージ袖でギターを抱え、ヒロジは深呼吸をした。汗と緊張が混じった表情には、これまで見せたことのない真剣さが漂っていた。
そしてサチの視界に、あの人の姿があった。
恋敵――七瀬 結衣
彼女はステージを見守りつつ、ヒロジの演奏に熱心に耳を傾けていた。
その視線に、サチの胸は小さく痛んだ。
「大丈夫、私は信じてる」
サチは自分に言い聞かせ、拍手をした。
ステージが始まる。熱気が観客席まで届き、照明が舞台を彩る。
しかし中盤、突然の機材トラブルが起こった。
「えっ……!」
ギターアンプが音を途切れさせ、バンド仲間も一瞬たじろぐ。
ヒロジは一瞬戸惑ったが、深呼吸をして仲間の目を見た。
「大丈夫、いくぞ!」
観客席のサチは、胸に手を当て、ヒロジからもらった月と星のネックレスを握りしめた。
「頑張って……成功しますように」
小さく祈る声とともに、涙がじんわり滲んだ。
ヒロジが必死に立ち向かう姿に、さらに胸が熱くなる。
結衣も目を見開き、ヒロジの実力を改めて評価しているようだった。
サチはステージに向けて、大きく拍手を送った。
「頑張って……!」
最後の曲が終わり、会場は割れんばかりの拍手に包まれた。
ヒロジは汗だくで息を整えながら、サチの姿を探した。
そしてgoodサインをした。それを見たサチは涙を拭いながらガッツポーズを返した。
2人の間には誰にも分からない不思議なテレパシーみたいな物が存在した。
結衣は微笑みを残しつつ、静かに席を立った。
彼女の存在は消えない――だが、今日は二人だけの勝利の夜だった。
ライブを終えたこの瞬間、ヒロジは初めてメジャーデビューのチャンスが現実味を帯びていることを実感した。
星が瞬く夜空の下、サチとヒロジは肩を寄せ合い、感動と希望に包まれていた。




