第一六章 星の贈りもの
サチの誕生日の夜。
街の灯りがにじむ中、サチはひとり駅前に立っていた。
彼から「今日はどうしても抜けられない」と連絡があった時、胸の奥に小さな空洞が生まれた。でも、彼の夢を知っているからこそ責めることはできない。ただ、少し寂しいだけだった。
駅に着いた時反対側のホームに見慣れた姿が現れた。
ギターケースを背負ったヒロジが、こちらを見て大きく手を振る。
「サチ!」
ざわつく夜風に負けないように、彼の声が届く。
ポケットから取り出した小さな箱を反対側にいるサチに向かって投げた。
軌道を描いて飛んできた箱を、サチは慌てて受け止める。
「……なに?」
震える指でリボンを解くと、中には月と星が寄り添うように輝くネックレスが入っていた。
胸の奥に込み上げてきたものを抑えきれず、サチの目から大粒の涙が零れ落ちる。
「……どうして、こんな……」
反対側のホームから、その姿を見ていたヒロジは、はっと表情を変えた。
次の瞬間、階段を駆け上がり息を切らせながらサチの前に駆け寄ってきた。
「泣かせたくて渡したんじゃないんだよ……」
そう言って、ヒロジはそっとサチを抱きしめた。
温かな腕の中で、サチは声にならないまま首を振る。
「嬉しくて……嬉しくて、泣いちゃったの」
ヒロジの胸に顔を埋め、涙を流した。
夜空には、薄い雲の合間から本物の星が瞬いていた。
月と星のネックレスの輝きと重なるように、ふたりの誕生日の夜は静かに刻まれていった。




