1日目ー21日〈1 出発〉
前回のあらすじ
青嶋 海と、青嶋 明は、正反対だけど仲良しの双子。今年は4年生です。7月20日、道を歩いていたら、宝島の地図が風に飛ばされてきました。明は反対しましたが、海が、強引に明日、21日に行くことを決定してすると、明を家に引っ張っていきました。
「はああ・・・」
自分の部屋の中で、明がため息をつきます。
「お兄ちゃん、いくらなんでも、無茶すぎるでしょ・・・」
そう言って、2度目のため息をついた時でした。
「お~い!明!そろそろ行くぞぉ!準備はできたかぁ!」
という叫び声とともに、兄の海が部屋に飛び込んできました。
青嶋 海と、青嶋 明は、正反対の双子です。昨日も、風に飛ばされてきた宝島の地図を、海が勝手に拾って、強引に出発を決めてしまいました。今日に出発をするということで、海が明の部屋に飛び込んできたのでした。
「もう、お兄ちゃん、私の部屋に勝手に入らないでって、前も言ったよね?」
「なんだよいいじゃんちょっとぐらい。それより準備はできたか?」
「もうとっくに終わってます!」
「それなら早く言えよ!ほら、さっさと出発するぞ!」
そう言って、海は部屋を出ていきました。
「もう、いつもそうやって兄の立場を使って妹を思い通りに操ろうとするんだから・・・」
文句をブツブツ言いながらも、明も後についていきます。
*
二人は、町はずれの海の近くに泊められた、とても大きくて古そうな海賊船の前に立っていました。明はぽかんと目を点にして、海は目をキラキラさせて。しばらくして、海が口を開きました。
「船は、これでいいよな?」
「いや、さすがに、この船は無理でしょ」
明が、あきれたように答えます。
「なんでだよ。これしかないだろ」
「それはそうだけど、中に誰かいるかもしれないよ」
そこまで言い終えて、少し間をあけてから、「そもそも」と明は続けます。
「船が見つかったとて、操縦できないでしょ」
いえ、そうではないのです。海は極度の船好きで、船の基礎から学び、操縦方法なんぞ完璧に暗記しているのでした。
「いやいや、できるに決まってんだろ!」
「そうだった・・・」
そう呟いてから、明は小さく舌打ちしました。
「とりあえず、中に入るぞ!」
そう言い終えるか言い終えないかぎりぎりのところで、海は船に乗り込んでいってしまいました。
「あ!ちょっと、待ってよ!待って!」
*
船の中で、明がため息をつきました。海は、それを逃さなかったようです。
「おい、なんでため息なんかついてるんだよ。なんか文句でもあんのか?」
「大ありだよ・・・」
明は、そう答えたのですが、海には聞き取れなかったようです。
「あ?今なんて言った?もっかい・・・」
その時です。
「うわっ!なんだ!?」
「ひゃっ!」
突然、船がぐわんと揺れたのです。
「波だ!波が来たんだ!ちょっ・・・明!碇探せ!」
「碇!?確かここら辺に・・・あ!あった!お兄ちゃん!こっち!」
「えっ!?こっちって、どっちだ?」
「だからこっちだってば!」
「明!とりあえず、下せ!行くから!」
「え、碇を下すのって、やったことな・・・うわあ!」
「くっ・・・まあいい、行くぞ!少し揺れるけど我慢しろよ!」
「えっ、待って、まだ心の準備が・・・」
そう言う明を無視して、海は、操舵倫(船を操縦するためのハンドル?みたいな物)に手をかけると、船を進めました。進むにつれて、揺れが収まっていきます。
だいぶ落ち着いたところで、海は船を止めて、碇を下しました。
「はあ・・・はあ・・・初っ端からものすごく疲れた・・・」
「ははは、まあな。さあ、地図見せて。この辺なら、地図にも書いてあるはず」
そう言って、地図をもらうと、海は地図を回したり、自分が回ったり。
「よし!多分、このまままっすぐ行けばつきそうだ。明、いいな?」
「うん、心の準備的には行っていいよ。ただし、あんまり危ないことはしないでよね」
明も、そう言って頷きました。
「分かってるって!じゃあ、しゅっぱ~つ!」
また操舵倫を握ると、今度はゆっくり、静かに船を進め始めました。