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★王妃の伝承
王子妃教育の合間にいつも王妃様がお茶を振る舞ってくれていた。
(今日もそろそろかしら?)
サティはいつもこの時間が待ち遠しく楽しみだった。
王妃様の生家は辺境の地で王都で学園に入るまで領地にいたそうだ。
その時代の話しをサティに面白可笑しく話すのでその僅かな30分程の時間がサティのその時の唯一の娯楽だった。
その日は何故かいつもの四阿ではなく王妃の部屋に呼ばれた。
王妃の部屋に造られた侍女部屋に招かれる。
二人っきりの空間。
「サティ今日は王妃の伝承を話さなければいけないわ」
「王妃の伝承ですか?」
「えぇこの話しは聖女がこの地に祈りの乙女を与えて下さった時から口頭でしか伝えられないの、これを伝承するのは王妃、そして聞かされるのは“祈りの乙女”なの、私は違ったけれど貴方は両方を兼ねているわ、だから今代は貴方に話すわね」
「はい」
「この話しは不思議なのだけど聞くのが相応しくないものは忽ち忘れてしまうのよ、そして祈りの乙女の役割がなくなった者も、ただこの話しを伝えなければならない者は何時までも歳を重ねても必ず覚えているのよ」
「⋯⋯」
「これは実際に500年前にあった事、この国の王家が虐げた王太子妃によって呪いが始まったの」
500年前、この国とユーフェミア国の間で婚約が結ばれた。
その当時のこの国の王太子ザッカーが隣国へ公務の為に訪った事が始まりだった。
その国にユーフェミア国からは国王と第二王女のファモリアが参加していた。
ザッカーはそのファモリアの美しさと聡明さに惹かれて婚約を申し込んだ。
ユーフェミア国は国が遠い事もあり国と国の友好のみでこの婚約に利を見出だせなかったから断りを入れた。
納得できないザッカーは直接ユーフェミア国に出向きファモリアを口説いた。
箱入りのファモリアはザッカーの精悍さや雄弁さに口説き落とされて婚約を結び、その1年後に嫁いできた。
ただ、ファモリアは知らなかったがザッカーには幼い頃から婚約者がいた。
この国の侯爵家の娘で名前はマキナーレ。
マキナーレは甘んじて側室に収まることになっていたのだ。
その事実はファモリアが嫁いで3ヶ月後に知らされた。
そのザッカーの不誠実さにファモリアは嘆くが、あまりにも遠い自国に直ぐに帰れるわけもなく、ファモリアは受け入れるしかなかった。
ザッカーはファモリアと出会ってからマキナーレに婚約破棄を伝えていた、ただこの国はその侯爵家に忖度しなければ国が経ち行かなかった為、マキナーレをどうしても王家と婚姻を結ばせなければならない。
国王がザッカーにファモリアを娶る条件がマキナーレの側室擁立だった。
それら全てをファモリアには教えずザッカーは彼女を口説き婚姻を結んだのだ。
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