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父の手紙にはやはりサティを心配する気持ちが面面と書かれていてサティの涙を誘った。
そしてサティが公爵家を出たあとの結末が書かれていた。
結論から言うとレオナードは王位継承権を剥奪されていた。
サティへの冤罪が晴れた為だった。
メリーナの虚言をしっかりと調べもせずに鵜呑みにしてサティへの断罪をした事が主な原因だった。
そして一番驚いたのがレオナードはレオンの容態も知らなかった事だ。
だからサティが王宮に来ていた事も知らなかったという俄には信じられなかった。
(では私の手紙も届いていなかったのね)
メリーナの実家の伯爵家の手の者が公爵家にも王宮にも居た為、二人の連絡を遮断していたようだと父は手紙に書いてある。
そしてありえない事にレオナードはサティが“祈りの乙女”だと知らなかった。
その件を読んでサティは笑ってしまった。
(レオナード様は王族だったわよね)
国王陛下はレオナード様に何も話していなかったのかしら?
それとも聞いていなかったのか⋯⋯。
読み進めるとそれも書いてあった。
レオナード様は常日頃から己を過信してる所があり、他人の話をあまり真剣に耳に入れてなかったようだと⋯。
サティはレオナードの事を思い出す。
(そういえばあの時変に感じたのだった)
それはレオナードが学園に入学する前だった。
サティは毎朝、公爵家の近くの教会でレオンの為に朝の祈りをしていた。
その日も朝早くから教会に行って帰ってきたらレオナードが来ていた。
学園に入る前にゆっくり会いたかったからと先触れなしに訪れたのだ。
確かその時に「出かけてたのか?」と聞かれたのに、レオナードが会いに来てくれたのが嬉しくてサラリとその疑問を躱してしまっていた。
よく考えればおかしいのだ、朝の祈りは必然でサティが“祈りの乙女”と知っていたなら、あの時刻に出かけていたのは当たり前なのに、質問してきた事がおかしいと何故気づかなかったのか。
あの時気づいていたらきっと“祈りの乙女”の事も話せていたのに⋯⋯。
そこまで思ってサティは気づいた。
(どうして私が教えてあげなくちゃいけないの?)
王族なら知ってて当たり前のことだ。
やはりレオナードが立太子できないのには理由があったのだとサティは感じた。
それからメリーナの事も書いてあった。
彼女を引き取った伯爵家はお取り潰しになったようだ。
王家にも公爵家にも子飼いを忍ばせてそして王家の婚約を壊したのだから当然の処罰だろう。
メリーナは虚言の事もあるので女子収容所に半年程入れられたあと修道院送致になったそうだ。
彼女は修道院を出たあとも行き場はないだろう。
修道院も孤児院と一緒で長くは居れない、ある程度年数が経ったら他の修道院に移動になるか、市井に出されるだろう。
(その時にレオナード様と結ばれるのかもしれないわね)
もうあの二人には関わりたくないと願うサティだった。
手紙を畳んで鞄に入れる。
「明日から歩いて移動しなければならないのだから早く寝ましょう」
自分に言い聞かす様に呟きベッドに入った。
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