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次の町の宿屋へ到着した所で借りていた馬車と護衛騎士にお礼を言って別れる。
宿に入り2部屋取って3人はダミアンの部屋に集まった。
「この話は他言無用でお願いしたいの、ただ私も話せる事と話せない事があるので曖昧なところもあると思うけど、それは了承してもらえるかしら」
二人は顔を見合わせてそして黙ってサティに頷いた。
「王家には代々呪いが伝承されているの、これは国の上位貴族は皆知ってることなのだけど、今代の呪いは第三王子のリオン様が受けてしまっているの」
そう言ってサティは話し始めた。
500年前から王家には魔女の呪いがかかっている。
その呪いに対抗するため、その当時の聖女が呪いを受けた王子と同じ時代に必ず“祈りの乙女”が誕生するように祈ってくれた。
そのおかげで王家は血を絶やさずにこれまで残って来たのだが、呪いを受けた王子の辛さは耐え難く、自殺するものもいる。
ただ自殺してしまうと他の王子に呪いが代わってしまうので、自死することも出来ない。
そんな辛い目にリオン殿下が現状罹っている。
今代の祈りの乙女はサティだったので、毎朝欠かさず祈りを捧げていた。
2年前にその呪いがピークを迎えた、1年間付きっきりで祈って今は無事回復したが、それで治ったわけではない。
またその様な事態になった時にサティは側にいないから根本的な解決を求めて、祈りの乙女を誕生させた聖女の国に行こうとサティは考えている。
「呪いを受けた理由も私は知ってしまったけれど、それはお話し出来ないの、でも元凶もユーフェミア国で間違いはないから、何かしらの解決策があるのではないかと思っているの。とても遠い国で過酷な旅になるかもしれないけれど、今なら引き返せるわ、二人とも私に付いてきて大丈夫かしら?」
「お嬢様が毎朝祈っていたのはその為だったのですね」
ファミが訊ねるとサティが頷く
「私はお嬢様の護衛騎士に公爵家から任命されました、だから私はずっとお側にいる事が仕事です。だから変に気を回さなくて大丈夫です」
「ダミアンありがとう、これからよろしくね」
ダミアンは力瘤を作って笑ってみせる。
サティもファミもその仕草に笑う。
「お嬢様私だってずっとお嬢様と一緒だったのです。お嬢様が突然公爵家に帰らなくなったのは王宮に居たからなのですね、そして帰ってきたかと思えば婚約破棄されたから国を出るって言われてどれだけ私が吃驚したか!2年も離れていたのです、これからはずっと側に居ますからね」
ファミはサティの母の乳母の孫だった。
引退した乳母の一家が流行り病に罹り亡くなったので残されたファミを母が引き取ってサティの侍女見習いにしてくれたのだ。
それからは侍女というより姉のように一緒に育ってきた。
そんなファミの言葉はサティの心に響く。
「ファミありがとう、もう離れないわ」
ダミアンが大陸の地図を調達してきていたので、3人で旅の行程を思案する。
サティは途中に教会がある所があれば祈りを捧げるので、予定に入れて欲しいと訴えた。
「お嬢様、毎朝の祈りは欠かせないのですか?」
「えぇ離れていても通用するのかはわからないけれど、祈らずにはいられないの、本当はお側にいたかったのだけど⋯⋯」
「あの馬鹿第一王子のせいですよね!」
「不敬よファミ」
「いいのです、だって今は他の国ですから」
サティとダミアンが笑う。
「お嬢様、あのあとのお話聞きたくありませんか?」
「?」
「旦那様からお嬢様が聞きたければ渡して欲しいと手紙を託されました」
「お父様が?」
「はい、ここに」
そう言ってファミは旅行鞄から手紙を出した。
少し迷ったけれどサティは受け取ることにした。
「後で寝る前にでも読んでみるわ」
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