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翌日到着した護衛騎士はダミアンと名乗った。
屈強な体躯に似合わない人懐っこそうな顔をした親しみを覚える風貌にサティは安堵する。
(どれくらい旅をするかわからないものね、いい人そうで良かった)
そして、もう一人おそらく彼女の事を事前に手紙に書かなかったのは、サティが断ると父が判断したからだろう。
サティが7歳の時から共に学び育った侍女のファミがダミアンの後ろからサッと横に出てきた。
「お嬢様、お元気そうで何よりです。私ちゃんと卒業しましたので」
サティが公爵邸を去る時ファミは一緒に行くと言って聞かなかった。
さんざん揉めたけど、最後にはまだ学生だったファミに学業優先と自分の事を棚に上げてサティは説得した。
そのファミが目の前に居る。
涙が溢れる、思ったよりもサティの心は寂しかったようで、あとから後から溢れて止まらない。
ファミはサティを黙って抱きしめて昔お互いで良くしたように背中を擦ってくれた。
懐かしさとそして安心感に包まれてサティの涙も落ち着いてきた。
「ファミありがとう」
「どういたしまして」
サティは町長夫妻に別れの挨拶をする。
「オットーさんアニーさんありがとうございました。この御恩は忘れません、次に会えたら必ずご恩返しさせて頂きます」
「サティ様、恩返しなどと考えなくとも宜しいのです。滞在費はちゃんと頂いておりましたし、私達が知ってる事を教えただけですから、それに家の事も手伝って下さいましてこちらの方こそありがとうございました」
「ルーナさんにもよろしくとお伝えくださいませ」
「はい、お嬢様言葉使いが」
「あっ!」
どうしても抜けない言葉使いに苦笑しながら、町長夫妻と手を振ってお別れした。
長い道程になる為、馬車を借りる事にする。
借り馬車屋へ行き手配をしてから3人で遅い朝食を取ることにした。
「目的地はあるんですか?」
ダミアンの問いにサティは頷く。
「ユーフェミア国に行こうと思ってます」
サティの目的地を聞いて二人は驚く。
ユーフェミア国はこの大陸では大きめの王国だ、聖女の国とも言われている。
ただ自分達の国よりもだいぶ遠い国なのでおそらく到着するまでに一年はかかると思われるので驚いたのだ。
「お嬢様、無礼を承知で目的を聞いても宜しいですか?」
「えぇ貴方達はこれから私と旅をしてもらうのですもの、ちゃんとお伝えしなければと思っているわ、ただこんなに開けた場所では話せないの、次に行く町の宿屋でお話しさせてもらうわね」
二人は揃って頷いた。
サティの目的、それはリオンの呪いを解く事だった。
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