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間違えたのなら正しましょう  作者: maruko
第三章 ままならぬ恐怖

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サティは今レオナードと対面して言葉が出てこなくなっていた。

ファミに励まされ話しをしようと思っていたらレオナードはダミアンに付いて行ってしまっていたので、帰りが遅かったのだ。

励まされた直前は意気込んでいたのに、いざ話すとなると言葉が出てこなくなった。

だが何時までもこのままではいけない。


「今日は守って下さってありがとうございます」


「いや大した事はしていない、ダミアンが頑張っていたから。もっと早く追いつければ良かったのだが怖かったであろう」


「⋯⋯はいとても」


「次の出発からは馬車に乗ると聞いた、幌馬車だから乗り心地は悪いだろうが荷物も運べるし何より足を駆使せずに済む」


「えぇファミに聞きました。あの⋯レオナード様」


「レオで良い」


「無理です」


婚約期間も愛称などで呼んだ事もないのにいきなり壁を取るのは止めてほしいとサティはドキドキした。


「あの護衛の件なのですが、その前に私の気持ちを聞いていただけますか?あの時も話しは聞いて貰えなかったので上手く話せないかもしれませんが⋯」


サティは無意識にレオナードに嫌味を言っていたが本人は全く気づいていない。

しかしレオナードは苦しかった、自分の行いがサティをどれだけ傷付けてしまっているのかを知らなければならないのだから。

レオナードにとってもあの婚約破棄の件は自分の浅慮さを思い出し苦しいのだ。

自業自得ではあるが⋯⋯。


「私は⋯⋯レオナード様をお慕いしておりました。ずっとこのまま婚約が続き次代をレオナード様と二人で民を守っていくのだと、ずっと子供の頃から思っていました」


「⋯⋯」


「ですからあの婚約破棄の時はショックで、婚約破棄を言われた事だけでは無く、私が一番ショックだったのは私の話しを聞いてもらえなかった事。そしてその時のレオナード様とメリーナ様の目です。お二人は私を憎々しげに見ておられました。その目が怖くて⋯とても怖くて。今日あの大きな熊に遭遇した時にとても恐怖を覚えましたが、その時にもあの時のレオナード様の目を思い出しました」


「サティすまない」


「私はダミアンの負担や今後の事を思うとレオナード様に護衛をお願いするのは、それはとても助かるのです。こちらからお願いしたいくらいなのです。でもあの目をあの恐怖を貴方がいると思いだして苦しいのです」


「私はサティ、君にとても酷い事をした。自分が反省しているからといって君に近づくべきではなかったのかもしれない。でも真実を知って、サティは私を避けていた訳ではないと知って。君にサティ、君に逢いたくて追いかけてしまっていた。探す旅に出ても手掛かりもなく、サティは元気にしているか、笑っているのか、私のせいで笑えなくなっていないか、そんな事ばかりを考えて。私はサティを諦められない。自分の自己満足なのはわかっているのだ、でもチャンスを今一度チャンスをくれないだろうか?」


「でもまた裏切られるのは怖いのです」


「⋯それはないよサティ。もし君を裏切る時は私が死ぬときだ。それくらいの覚悟はまだ、私の中にもあるんだ」


「⋯⋯」


サティは悩んだ。

このまま側にいたら確実に思いは募ってまた好きになるのは見えている。

いやまだ好きなのだから絆されてしまう。


自分の心に聞いてみる。

⋯⋯解らない、どうすればいいのだろうか?

許してもいいのだろうか?


「サティ、私を許さなくてもいいんだ、怖いのなら君の隣には行かないようにする。ただ君達が何処に向かっているかは解らないが、旅に護衛として参加させて貰うだけでいいんだ。それでも駄目だろうか?」


「⋯⋯解りました、恐怖を克服できるかも解りません。それでもよろしいのですよね」


「あぁ」


「ではよろしくお願いします」


「ありがとうサティ、それともう私は王子ではない、だからレオと呼んでくれ。ファミやダミアンにもそう言っている。それはよろしく頼むよ」


そう言い残してレオナードは部屋を退出した。


入れ替わりに来たファミにレオナードが同行する旨を伝えると「解りました」と一言言ってサティの頭を撫でて、いつものように軽く抱きしめ背中を擦ってくれるのだった。





ここまでお読み頂きありがとうございます

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次回もよろしくお願いします。

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