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目を覚ましたときサティはベッドに寝かされていた。
天井は所々黄ばみのあるきっと元は白い色だったかのような様子。
ふと横を見ると小さな棚に本が乱雑に入れてあるのが見える。
目だけで寝たままグルッと見ると壁はシンプルな薄い緑色。
(此処は何処だろう?)
サティは自分の記憶を手繰り寄せてみる。
レオナードの声が耳に残っている「サティ」と呼ぶ声は相変わらずの愛しい声。
サティは自分がまだレオナードを好きな事に気づいている。
『護衛でいいから同行させてほしい』
そう彼は言った、サティの本心は嬉しかった、けれど怖いのだ。
一度あの恐怖を味わってしまった、侮蔑したあの双眸。
(もう裏切られるのはいや)
これもサティの本心なのだ。
自分の気持ちがままならないサティは本当にどうしていいかわからずファミに相談しようと思った。
今までは主従関係であった、気持ちの上でも身分でも。
でも今は一緒に旅をしてくれる友だ。
少なくともサティはそう思っている。
サティはゆっくり起き上がりファミを探したがこの部屋にはサティが寝てる以外、誰も居なかった。
暫く待っているとファミが入ってきた。
「お嬢様起きてらしたのですね」
「ファミ此処は?」
「街外れの家です、森を抜けて一番近い家にレオナード様が飛び込みました」
ファミの後ろからいい匂いがすると思ったら、サティ達よりも少し年上に見える女の人がお盆にスープを乗せている。
「お嬢様、何か召し上がってからお薬を飲みましょう」
ファミは女の人からスープを受け取りスプーンで掬ってサティの口元に持って来る。
「自分で飲めるわ」
人前で恥ずかしかったのでファミからお盆毎取り上げてスープを飲む。
アッサリとしたキノコのスープだ。
この辺もまだキノコの産地なのだろうか。
サティはそんな風に思いながらスープを完食した。
「今ダミアンが幌馬車を手配しに行っています、此方の夫婦の方に聞いたらこの先は小道などはしばらくないそうです、馬車で行き来したほうがいいと判断しましたので、此方のご主人に付き添ってもらって買いに行ってます」
「幌馬車とは商人達が乗っている馬車ね」
「そうです歩くよりもずっと楽ですし武器とかも積めますので」
「そうね、そんな事を思いつきもしないなんてまだ抜けてないのね」
一年も貴族社会から離れていたサティはもう随分と平民に近くなったように思っていたが、少し平民の生活を覗いただけなのだと痛感した。
完食したスープのおかわりを訊ねられたが首を振ると、その女の人は「向こうに行きます何かあったら言ってください」と言って部屋を出てくれた。
サティが何かを話したいと気付いてくれたのかもしれない。
サティはファミを見つめて
「ファミあのね相談があるの」
ファミは心得たように頷く。




