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「サティ様そろそろ慣れましたか?」
「そうですね、この生活にも慣れてきました、オットーさんありがとうございます。奥様に色々教えて頂いたので、もう一人でも生活できると思いますわ」
「サティ様言葉遣いが⋯⋯」
「あっ」
サティは両手で口を押さえる。
平民の生活をしようと思っていても、つい言葉が令嬢の時の様になってしまう。
それもしょうがないのだ。
彼女は15年も公爵家の子女だったのだから。
「供の手配をした方が宜しいかと思いますよ」
「でも」
「お父様に手紙を出しました。おそらく直ぐに手配してくれると思います、ただ聞いてほしいと返事が来ています。帰る気はないかとお訊ねです」
サティは左右に首を振った。
彼女は丁度一年前に婚約者であった第一王子に婚約破棄を言い渡された。
彼の新しい婚約者は同じクラスだった伯爵家の娘で庶子だったのを引き取られたばかりの娘だった。
王妃様はとても厳格な方だからおそらく認めないだろうと思う。
国王陛下は彼女を側室にしてサティをお飾りの正妃にするかもしれない、その逆も有りかも。
(そんなのは嫌)
あのまま国に残っていたら王命が下るかもしれない、そう思って国を出た。
父はきっとサティの気持ちを慮って王命に逆らってしまう、そんな事になったら長く続いた公爵家に迷惑がかかる。
何より大好きな家族にお咎めでもあったら⋯。
サティがいなければたとえ王命でも、どうにもならない筈、だって本人がいないのだから。
そう考えて国を出たのだ。
国を出たばかりの時は何も宛はなかった。
ただ只管旅をしていただけであったが、今は目的が決まった。
これからの旅の準備の為にここへ来た。
それは町長が昔公爵家で働いていた庭師だったから。
一人で旅をする為、生きていく為の準備をここでさせてもらおうと訪ねて来たのに、半年の長旅の疲れが出て倒れてしまい一層迷惑をかけてしまった。
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