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人間がいなくなる未来

作者: 昼月キオリ

2700年。

年間平均気温27度。年間平均湿度85%。年間平均降雨量2300mm。

この国、いやこの地域にはもはや人間は一人もいない。

植物が爆発的な成長を遂げ、かつて人間が作り上げた建築物はその脅威の元飲み込まれた。

巨大化した食虫植物に人々は喰われ、この国に人間という生き物が存在していたことさえ忘れ去られようとしていた。

今この国を支配するのは巨大化した植物と動物たちだけである。


2600年。1月。

最初の異変が起きる。

ペットショップに植物のツルがどこからともなくまとわりつき始める。


2600年。2月。

二つ目の異変が起きる。

「なんだか最近建物にツルがやけに付くなぁ」

テレビでペットショップだけにツルが異常にまとわり付くという摩訶不思議な映像が流れる。

人為的なものではないことから解明はできないそうだ。


2600年。3月。

三つ目の異変が起きる。

最初はペットショップだけだったのだが、次第に花屋、水族館や動物園、植物園まで謎のツルが巻き付くという現象が起きる。


2600年。4月。

ペットショップの扉やゲージが何者かによって破壊され、中にいた動物達が一斉に逃げ出す。

テレビでは事件性を疑ったが、監視カメラには誰かが侵入した形跡は見当たらなかった。


2600年。5月。

ペットショップ事件から一週間。

水族館、動物園、農家まで何者かによって破壊されるという事件が起きた。

飼われていた動物や魚、虫たちは瞬く間に逃げ出した。

この時期になると監視カメラの台数を増やし、見張りを付けるなど対策が練られたがどれも上手くはいかなかった。


2600年。6月。

ペットショップ事件から一ヶ月後。

ついには植物園や花屋まで破壊され、植物達がその場から忽然と姿を消すという事件まで起きた。

この頃、ようやく犯人の正体が明らかになった。

監視カメラの映像でようやく捉えたもの。

それは最初に見かけたあのツルだったのだ。細いツルは監視カメラの視覚となる部分を自由自在に動き回り、建物の内部に最も簡単に侵入。壁に貼り付くとあっという間に壁の中側までツルが貫通し、毛細血管のように広がるとあっという間に建物は崩壊してしまった。

僅かなツルは監視カメラに写っていたものの、壁の内部に入り込んだツルまでは捉えられず、捜査が難航していたのだった。


2600年。7月。

植物を撲滅させようと自治体が心みたが、どれも上手くはいかない。

逆に植物に手足を取られ、身動きできなくさせられてしまう結末に。

火を使って焼き切ろうとするも、焼けるのはほんの一瞬ですぐに再生し、襲いかかってくる。

その再生力はすさまじかった。


2600年。8月。

そうして人間と植物が戦っているうちに人間に飼われていた動物は姿を消し、森の中へ帰っていった。

やがて人間は食べるものが無くなり、残ったものを奪い合い、自滅の道を辿った。

人間の遺体は全て食虫植物や肉食動物のエサとなり、それが更に植物、及び肉食動物の巨大化へと繋がった。

最初の異変から一年足らず。

この国から人間は一人もいなくなった。

人がいた痕跡は消え、この国に人がいたことさえも忘れ去られた。

今生きている動物や植物たちはかつてこの国に人が住んでいた事さえ知らない。

 

 


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