#1
「ここの答えをー、斎藤さん」
「あー、わかりません」
「んーじゃあ後ろ行ってー……」
授業にも身が入らない。
先週書き始めた小説はまだ10行で止まっている。小説のことを考えていると授業にまともに集中できず、当てられてしまったら答えられないことが増えた。
「うわ、次俺じゃん答え何?」
「お前ちゃんと話聞いとけよww」
後ろから声が聞こえてくるが、生憎このように話せる友達はいない。
我ながら自分のコミュ力に絶望する毎日だ。……まあ、そこまで友達を作るのに意欲的でもない。友達がいても小説について相談できることもあるまいし。
休み時間になって、授業を受けて。そしてまた休み時間になって、授業を受ける。その繰り返し。
そしてお昼になって教室でご飯を食べる。便所飯なんて言葉もあるが、不衛生過ぎて嫌だ。
「斎藤。」
机に影が射した。
「私がいなきゃ、今日もお前はぼっち飯だった。」
「私はそれでいい。」
前言撤回。彼女は友達か。完全に忘れていた。
彼女、三神柚は勝手に前の人の机を寄せこちらにくっ付けてくる。
お節介と言えばそれまでだが、三神は例の唯一小中高と同じ人間であり、一応話せる仲ではあった。
「連れないねぇ~。今日の授業も全部分かりません、分かりません、分かりませんって」
「三神」
「聞けよ人の話を」
「もし友達が重病で、今年の夏死ぬってなったらどうする」
「………??」
こうなればもう誰でも良い。聞いてしまおう。
「私以外に友達いたのか」
「いたとして」
「かわいそうなやつだな。てか、そいつが誰かに言うかどうかわかんねーじゃん」
「どういうこと?」
話を曲げるし、話すにも分かり辛い。やはり彼女に聞くのは間違いだったと思う。
「えーだからー、なんだ、語彙力ないかも。お前の友達が私は重病だ、って誰かに言ったところで治るわけでもないだろ?」
「そうだけど」
「だったら言われないだろ。変に気を使われても困るし」
「ふーん」
よく分からないけど、なんとなくお母さんと似ている気がした。
「なんだよ、ふーんて。」
「べつに」
「あそう。てか、今度花火大会あんじゃん。行こうよ」
「嫌だ。なに急に」
本当になんなんだ。
やはり彼女は、少し掴めないところがある。




