プロローグ
高校1年の夏のある日、学校から帰ってきた後。
久しぶりに小説サイトに小説を作って上げようと思い、ノートパソコンを開いて中学の頃よく使っていた小説サイトにログインした。
「えーと、作成。んー、題名……」
題名を考えて、エピソードを書き始める。
……3行目。書けない。
試行錯誤して、なんとか10行ほど書いたら、既に30分も経っていた。
「みやー?ご飯ー」
「わかったー、今行くー」
まあ、序盤で止まっちゃうことなんてよくあることだし、ご飯から帰ってきたら何か思い付くでしょ。
なんて、思いながらパソコンを閉じる。
「おかーさーん、今日のご飯何ー?」
「麻婆豆腐ー」
「ほんと?やったー、好きなんだよね」
「知ってる」
なんて他愛もない会話をしながら考えるのは小説の続き。
自分でご飯をよそって席につく。お母さんも同じように前に座ってご飯を食べ始めた。
「ねぇ、最近どうなの?」
「どうなのって?」
「学校。友達出来た?」
「あー……」
私の通う高校は地元から少し離れた公立高校なので、同じ中学出身の人は自分を除いて1人しか進学していない。
それに加えて、私はそこまで高い社交スキルがない。
「まあまあ、何人かは喋れる感じ」
我ながらよく分からない言葉を返す。実際は喋れる人なんて全然いない。
周りの子と答え合わせ、なんて自分を囲んでみんな別の子とやっているし、私に割り込むという勇気も気力もない。
「何かあったらいいなさいよ」
少し察したであろうお母さんは、それ以上何も聞いてこなかった。
あ、そうだ。『高校生になって高校デビューに失敗した女子高生が、秀でた才能で人脈を伸ばして生徒会長に!!』って、n番煎じすぎるか……
「ごちそうさま」
「おかわりは?」
「んー、どしよ」
「ちょっと多くつくったけど」
「じゃあ食べる」
こういうときはたくさん食べて頭を働かせよう。
二杯目をつぎながら、とりあえずさっき少し書いた小説の終着点を考えていた。
「ねえ、お母さん」
「ん?」
「余命宣告されてる同級生と夏休みに思い出を作るって話があったとして、お母さんならこの話、どう終わらせる?」
とりあえず、お母さんに少し案を聞いてみることにした。
「なに、高校にそういう友達がいるの?」
「そういう訳じゃない。例えば、だよ。」
最初は少し驚いたような顔をしたが、すぐにいつもの穏やかな顔に戻って、うーん、と考える素振りを見せた。
「そういうのはよく分からないけれど、お母さんが余命宣告された子の立場なら、最期は分からないようにしてほしいな。」
「え?」
最期が分からなかったら、本当に死んだかどうかも分からないじゃないか。
食べ終わったらしいお母さんは、自分の使った食器を持って席を立った。
「仮にお母さんならの話よ?大事な人には、強い人間として。……お母さんとして、最期まで記憶されたいの。」
「そうなんだ。」
「参考になった?」
「うん。ありがとう」
お母さんが食器を洗う音をBGMに、頭の中でさっき言われたことを復唱しつつ考える。
"ふと思い返したときに、あの子は最期まで強かった、って言われる人間でありたい。
そんな思いを胸にもうすぐ動けなくなると悟った子は最後の夏を共にした同級生たちの前から姿を消す……"
少し悲しい物語だな…。でも、悪くないと思う。やっぱりお母さんに聞いて正解だった。
「ごちそうさま」
「ちょっと休憩したらお風呂入ってね」
「はーい」
自分の分の食器を洗い、2階の自室へ上がる。
時計を見たら、7時。7時半くらいになったらお風呂に入る準備をしようと決めてからパソコンを開き、今出たアイデアをメモにまとめる。
「んー、なんかちょっと違う……」
とりあえず全て文字に起こしたはいいが、少し違和感のような、先程と違うイメージを受ける。
というより、パソコンと向かい合った途端に今まで考えていた表現が抜け落ちてしまって、残ったのはがらくたのような当たり障りのない表現ばかり。
「あーもーーーーー」
時計を見たら7時半をとっくに過ぎていた。
とりあえず、お風呂に入ってから考えよう。
こんな生活で一向に進まない日々が、1週間以上は続いた。




