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異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp! 【 完結】  作者: ちゃりネコ
第一部 一章 遭難と書いてソロキャンと読もう!
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自然の恵みを頂こう!

 森は一見すると食べ物など何もないように感じるかもしれないが、実際には沢山の恵みに溢れている。

 その証拠にちょいと草を掻き分けると…ほら、あった。

 これはウグイストリイチゴ。

 鮮やかなピンク色の果肉で一般的なイチゴと比べて大分小さい。

 野イチゴの一種らしく、その名が示す通りウグイスが好んで食べるようだ。


「香りは…おぉ、こんな小さいのに甘くて強い。

 感覚的には蛇苺ヘビイチゴに近いのかな?」


 虫に食われていないか確認する為に中を割ってみると、内部は透き通るように白く瑞々しい。

 口に入れると小指の先ほどのサイズにも関わらず、大量の果汁を含んでいて濃厚な甘味が広がる。

 簡単に見つかる上に沢山自生していて、本にはビタミンやミネラルも豊富と記載されているから実に助かる。


「こりゃウマイ! まさに天然のスイーツだな」


 なるべく採り過ぎないようにして、次の場所へ向かって腹の足しにしていく。

 その最中も視線を動かしているとミツミシソを発見。

 異世界に来てすぐに発見したけど、結局食べようとしなかったシソ科の植物だ。

 生でも食べられるそうなので一枚口にするが、やはり苦味が強い!

 こいつはセオリー通り水でアク抜きした方が無難だな。


「まだ水は見つけてないが少し持っていこう」


 近くにはキノモトワラビも自生していた。

 これも食用だが新芽には毒性がある為、熱湯で無毒化させなければならない。

 空のツナ缶を容器にして煮沸すれば貴重な食料になるだろう。

 今晩の夕食が今から楽しみだ。


「こっちも持っていく。腹の足しにもならんが、足さなきゃ減る一方だからな」


 次に見つけたのは木の枝に実っていたマルハウメ。

 少し時期が早いのか熟しておらず、若々しい緑色をした大粒の果肉で食べ応えがありそうなのだが、これにも毒性があって生のままでは食べられない。

 しかし、先程のミツミシソと塩を加えて漬け込めば、保存の効く梅干しとして大いに活躍してくれるだろう。

 手にしてみるとズッシリ重く、活用できれば食糧難の一助となってくれるはずだ。

 暑苦しいダウンジャケットを風呂敷ふろしき代わりにして持っていく。


 とはいえ、塩の入手は現状として難しいと言わざるを得ない。

 ここが()()日本だとして、塩の入手経路は海から採れる海水を蒸発させた天日塩しか方法がないからだ。

 知らない人もいるかもしれないが日本では岩塩は見つかっておらず、塩は食料保存の手段として欠かせないばかりか、これから夏を迎えるにあたって熱中症予防の観点からも絶対に手に入れておきたい。


「調味料の中に塩はあったから、ここはポイントの使い所かもしれん。採取で見つけるのは諦めた方が無難か」


 そんな具合に次々と食料を確保していくが、どうしても最優先で見つけなければならないのが飲み水だ。

 猿酒も貴重な水ではあるが得られる量も質も限られており、長期の生活を維持する点において、新鮮な真水の確保は絶対条件と言える。


「Awazonに水が売ってないとか嫌がらせかよ…。

 いやいや、水と平和を無料ただと思うな。

 どうにかして自分で確保しないとな」


 ここでも活躍するのが動植物の生態を記した『異世界の歩き方』だ。

 早朝に聞いたさえずり声の主はミズサシシギという水辺に生息する渡り鳥で、5月には森で巣を作りながら水場で餌を探す習性があるらしい。

 つまり、案外近くで湿地や川が見つかる可能性がある。


「鳴き声の大きさからして中型の鳥だろう。

 それなりの猟場がなければ住み着かないはずだ」


 上手くいけば、水場を拠点に安定した生活が手に入るかもしれない。

 注意深く空を見上げれば、ミズサシシギの群れが南西の方角へ向かって飛んでいく姿を度々見る事ができた。

 ここは行動あるのみ。

 俺は期待感を持って、力強く南西へ足を向けた。

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