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異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp! 【 完結】  作者: ちゃりネコ
第一部 一章 遭難と書いてソロキャンと読もう!
8/300

異世界、始まったな

 翌朝は鳥のさえずりによって目が覚めた。

 Awazonの通知から現在の暦は5月初旬という事が判明している。

 昨日までの不安は払拭され、実に爽やかな初夏の風が吹き抜けていく。


「ふふっ、もはや俺に怖い物などない…。

 神から授かった新たな力…。

 存分にふるってくれるわ!」


 昨夜からテンションがぶち上がり過ぎて若干アレな感じになっているが無理もない。

 気分はまさに銃を抜き放つガンマンさながら、ポケットからスマホを取り出すとホーム画面のアイコンをタッチする。

 そして空中に召喚された一冊の本を華麗にキャッチし、も言われぬ恍惚こうこつに浸るのを繰り返す。


「か、かっけぇぇええ……」


 今朝からずっとこの調子である。

 お陰で肝心の本にはロクに目を通さず、決めポーズばかり考えていた。

我ながら今年21にもなって恥ずかしくないの?

 異世界アプリ『Awazon』も凄いがこちらの『異世界の歩き方』も実に良い。

 理由は本としての内容もることながら、その仕舞しまい方だ。

 スマホのアイコンをもう一度タッチするか、開いた本を閉じれば手元から手品のように消えてしまう。

 この『本を閉じて消す』のが個人的に非常に()()なのだ。実に格好いい!

 知識を得る手段として、えてアナクロな本という媒体なのも気に入った。


「原理とか全然分からんけど、格好いいからヨシ!」


 もう一つ、昨日から気になっていたAwazonのポイントについて。

 どうやら貯めたポイントを消費する事で色々な物を購入できる…らしい。

 まだ試してはいないが恐らくツナ缶の時のように、何もない空中から品物が出現するのだろう。

 そして、不思議な事に遭難してからスマホのバッテリーが全く減っておらず、この便利な機能も使い放題みたいだ。

 こちらの理由も不明なままなのだが、もうそんな事には慣れてしまっていた。


「さて、朝からガッツリ気分も上がったし、食料と水でも探しにいくか。

 そう、我が能力でな!」


 そもそも何故なぜポイントを使って食料を手に入れないのかと言えば、明確な理由が2つある。

 Awazonには調理器具や医薬品はあっても、どういう訳なのか調味料以外の食料と水が表示されていないのだ。

 無い物は買えない。

 だからこうしてサバイバル生活みたいに、草むらや木の周りをしきりに探し回らなければならないのだ。


「調味料でカロリーを補完する手もあるがな、それは最後の手段としておこう」


 現在のポイントは缶切りなしで缶詰を開けた1000ポイントを加え、合計23000ポイントしかない。

 十分なポイントがあるようにも思えるが、単価はAwazonの価格から見ても1P=1円であり、足りない物が多すぎる現状、食料の為にポイントを使ってしまえば、万が一怪我をした場合に医薬品も買えず命取りになりかねないのだ。

 愚痴グチっていても仕方ない。

 これまでに得たキャンプ知識と我が能力『異世界の歩き方』を駆使して、この苦境を脱しなければ!


「我が能力…おぉ…格好良い……!」


 そう、今日をもって俺は遭難者ではない。

 これからは遭難ソロキャンと呼ぼう!

 森の中で一人、にやけた笑いを抑えられずにウキウキとした足取りは羽を思わせる軽やかさを感じていた。

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