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Let's walk!

 翌朝は日が昇る直前から行動を始めた。

 保存食を中心とした食料をドラム缶に詰め、その他の物資をバックパックに入れた後、最後にツルムシで編んだ注連縄しめなわを回収しようとして絶句してしまう。


「一晩でこんな…ボロボロじゃないか……」


 昨晩は青々とした色身だったはずなのに、まるで何年も放置したみたいに酷く劣化した縄を見て、改めて相手は人智の及ばない存在なのだと思い知らされる。


「やはりのう…。

 一晩持ったのが奇跡じゃな」


 昨夜は有効な対策が見つかったと喜んだばかりだというのに、これでは焼け石に水じゃないか。

 俺に残された希望は森の奥に住む修験者に会うしかなく、心理的に追い詰められたという事実が胸を締めつける。


「……行こう」


 言葉少なげだったのは、感情に任せて暴言を吐かないように努めた為。

 事実上の協力者である初音に心理的な負担を負わせたくないという配慮であり、たとえ実年齢では年下であったとしても、精神年齢と見た目からは保護者のような気持ちを抱いていた。

 だからこそ、危険な旅程に巻き込んでしまった事について、少なからず負い目を感じていたのだが…。


「次はどんな景色が見れるか楽しみじゃのう!」


 本人は至って気にした素振りはなく、思いっきりキャンプを楽しんでいた。

 大物感というか、神経が図太いというべきか…。

 自嘲じちょう気味な笑みを拭い去り、視線を落とすと一日ぶりの外出にき立つギンレイの姿が目にまる。

 頭上から続く銀のたてがみを雄々しく逆立て、激しく尻尾を振り乱して急かす様子は、野生ならではのたくましさを示してくれているようだった。


「結局、一番神経が細いのは俺か…」


「何か言ったかの?」


 初音の問い掛けに無言で首を振った。

 どこか吹っ切れた横顔には悲壮感など微塵もなく、昇り始めた太陽が暗闇に沈んでいた行き先を煌々《こうこう》と照らしだす。

 葦拿あしなよ、異世界こんなところで迷ってどうするってんだ?

 不安や恐怖なんて()()()()()()()()()

 人間は生まれてから死ぬまでの間、ず~っと怖がりのままなのさ。

 俺も、初音も、ギンレイも、そして小屋の中で人知れず死んでいた男もきっと…。

 名も知れぬ男へ一宿いっしゅくの礼を述べ、俺達は今日という光差す道を目指して歩き始めた。


  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 再始動という感じで書いてみました。

 夜明けの太陽と共に旅を再開する、そんなイメージであしなの心にあった霧が晴れていく思いです。

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