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異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp! 【 完結】  作者: ちゃりネコ
第一部 一章 遭難と書いてソロキャンと読もう!
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特別イベントの予感

「嗚呼、御馳走様でした…」


 狼が食べ残した殻を見つめて至福のひとときに思いをせる。

 カワラムシャガニの特徴である強力なハサミは、中までぎっしりと筋肉が詰まっていて、本当にカニの爪その物だった。

 流石に殻は硬過ぎて人には食べれそうにないが、狼は意にも介さずバリバリと音を立てて噛み砕く様子に、幼いながらも野生の片鱗へんりんを垣間見た気分だ。

 その野生児も今は自身の毛並みを整えるのに余念がない。

 そういえば異世界に来てから風呂に入っていない事を思い出してしまう。


「ああ、意識したら無性に風呂…温泉!

 ああああ! 温泉入りたいぃぃい!

 ……いかんいかん、しっかりしなければ!」


 危うく禁断症状に駆られる所だった。

 何を隠そう俺は無類の温泉好きで、それが高じて全国のキャンプ場を巡る際は、必ずその地方の名湯や秘湯を楽しむようにしていたのだが……。

 異世界こっちに来てからというもの、ロクに水浴びすらしておらず日々汚れていく自分の体に歯痒はがゆい思いをしていたのだ。


「ヨォシ! 決めたぞ。

 明日は絶対に水浴びしよう!」


 同じく降り続く雨にうんざりしていた子狼も、外出の機会を得てテンションが上がりまくっているのを尻尾で表す。

 ちょっとした気晴らしがないとストレスが溜まってしまうのは何処の世界でも変わらない。

 夜の暗闇に抗おうとする健気な焚き火を前に、孤独な男と狼は年甲斐もなくはしゃぎ、最近になって強く感じるようになった視線を一時でも忘れ去ろうと、努めて夜を過ごす。


  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 黒のとばりが人知れぬ森を包み込み、そこに住まう者達に等しく安息を与える時刻。

 そんな中、俺は今日までに得たAwazonのポイントを確認しておこうとスマホを片手に画面を覗く。


「おお、ポイント結構いってんじゃん」


 焼き干しを作成(失敗)――1000P

 甘露煮を作成――1000P

 未知との遭遇――……

 一夜干しを作成――1000P

 カワラムシャガニを採取――1000P

 梅干しを作成――1000P

 鍾乳洞を発見――10000P

 虫除けを作成――1000P

 ベッドを作成――1000P


 残しておいた306,900ポイントと合わせて、合計で323,900ポイント!

 貯まっていくポイントを見ていると、自然に笑みがこぼれてくるようになったのは最近の事だ。

 Awazonのショップで買い物をしている時だけは、異世界での不安定な生活を忘れられるが、もしかしたら元の世界でも同じだったのかもしれない。


「それにしても、ここに来てから何日経った?

 親父やお袋、それに友人のAは俺を探しているのだろうか? 大学の方は退学処分になってたり……はぁ」


 考えても答えなど見つかるはずもなく、未だこうなってしまった原因すら掴めない。

 気分が落ち始めた所でスマホの通知欄が目に飛び込んでくる。


『好評価ボーナス☆50突破特別イベント』


「………なんじゃこれ、イベント?」


 今までのメッセージとは明らかに毛色の違う雰囲気に少々戸惑い、通知をタッチするか迷いが生じる。

 だが…今までずっとAwazonには助けられてきたじゃないか。

 もしかしたら状況を一気に好転させる出来事だったり、蛇女を撃退できるような道具やアプリかもしれない。

 淡い期待を胸にイベントを示す通知欄をタッチするが―――何も起こらない。


「え、なに? なんなんこれ!?

 パルプンテみたいな奴は勘弁してくれ!

 そういうのが一番怖ぇわ!!」


 戦々恐々としながら辺りを見回すが笑顔の巨大な魔人が現れたり、夢の中で犬かきの練習をしている狼がメタルスライムに化けたりなどの変化は起きなかった。

 あいも変わらずホームの中は薪のぜる音と虫達の合唱が聞こえるばかりで、何の変化も見られない…と、思う。多分。


「…ッ怖ぇえ……もう寝よ」


 この晩、懸念していた蛇女は姿を現さなかった。

 それだけが心の救いだっただけに、意味不明な特別イベントとやらの奇妙な薄気味悪さと、肩透かしを受けたような後味が余計に気になる。

 しかし、この時の俺はその後に起こる事態を全く予想できず、安易に未知のモノに触れてしまうリスクを甘く見ていたのだと痛感する事になるのだった。

 好評価ボーナス特別イベントとは?

 明日は物語のメインヒロイン登場です!


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