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異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp! 【 完結】  作者: ちゃりネコ
第一部 一章 遭難と書いてソロキャンと読もう!
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蛇女(仮)の考察

「うわぁ~…ダルぅ……」


 文字通り震え上がる一夜が明け、命が助かった事に一先ひとまず安堵する。


「あの女…一体何の用だったんだ?

 いや、すんげぇ美人だったけどさ」


 少なくとも人間に出会ったのなら、救助してもらえる可能性が出てきたのだと喜ぶべきなのだろう。

 ()()()()()()()()()()、の話だが…。

 それとも、昨夜の出来事は全部夢だったのか?

 焚き火が持つ不思議な魔力が見せた、一時いっときの幻だとでも言うのだろうか?


「いや……夢なんかじゃない!」


 俺の足元に残っていたのは――ホームの入口から壁際まで続く、巨大な蛇行跡!

 降り続く雨と洞窟内の湿気によって地面はぬかるみ、御丁寧に迷惑極まる証拠を提示して下さったというワケだ。

 コレを初めて発見した時はむしろ夢だと思い込み、そうであって欲しいと強く願った程。

 だが、物的証拠がある以上、無視するのは逆に危険なのかもしれない。

 呼び名がないと不便なので、仮にアイツを『蛇女』と名付けよう。


「お前も見てたよな?

 アレは人間だと思うか?」


 あっさりと敗北した幼いタテガミギンロウに調書を取るが、昨夜の事よりも放置したままの保存食に興味の大半が向いている様子。

 俺は大きく息を吐き出すと刑事の真似事まねごとを諦め、無言のリクエストに応える方を優先した。

 常識では測れない超常の存在を相手に、アレコレと考えていても仕方がない。


「もしかして異世界特有の生物……とか?

 こっちの世界にも人間が居るとして、全員があんな感じだったらイヤだなぁ」


 マブナフナの不思議な生態を例に挙げ、想像すらしてこなかった生物の可能性もゼロではないのだ。

 事実、俺は殆どの情報を『異世界の歩き方』に頼っている。

 だとするなら……。


「おっと、また考え込んでたな。

 もう少しだけ待っててくれよ」


 一向に手が進まない事にごうを煮やした狼は俺の足首を甘噛みしたり、ベロベロとなめ回してヨダレまみれにしていた。

 このままだと骨までしゃぶられかねない。

 昨夜の事は一旦忘れ、火に掛けてあった焼き干しとダッチオーブンを片付ける。

 丸一晩放置していた甘露煮はギリのギリッギリ良しとする一方、焼き干しの方は均一に火が通っておらず、残念ながら失敗に終わったと言わざるを得ない。

 当然、失敗だから即廃棄などもってのほか

 今日のところは未完の大作を食べきってしまうとして、問題は相棒の朝食だ。

 どちらも調味料を大量に使ってしまったので、犬に食べさせるのはNG

 そこで、楽しみにしていた取って置きを早くも投入する。


「折角なんだから味わって食べてくれよ?

 葦拿あしな特製、マダライワナの一夜干し!」


 昨日の内に大きな個体を選別して干しておいた。

 ホームの奥は初夏でも上着が欲しくなるくらい気温が低く、冷燻れいくんの環境として最適なのだ。

 もし、焼き干しではなく冷燻れいくんの方を選択しておけば…いやいや、過ぎた事を考えるのは辞めよう。

 狼は最高に仕上がった一夜干しを見ると激しく尻尾を振り回し、包帯の巻かれた後ろ足で懸命なジャンプを見せた。


「おいおい、無理すんなって!

 ほら、お前に全部やるから」


 回復の為なのか、狼は味わう素振りすらないままに、それこそ秒で朝食を終えてしまった。

 時は金なりと言われるが、そこまで急いで食べる事もないだろ…。

 満足した狼は竹皿に置かれた焼き干しまで食べようと身構えるが、俺が素早く頭上に上げてしまったので未遂に終わる。


「油断も隙もない奴だな。

 さて、俺も朝食を済ませるか」


 余分な塩気を水でさらした後、再び火に掛けて乾燥させた物を口にする。

 うん、やっぱり固くて辛い!

 しかし、幸いな事にイヤな臭いはなく、今日の内に食べてしまえば問題はないだろう。

 やらなければならない仕事はうず高く積み上がり、今にも山崩れを起こしてしまいそうだ。

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