表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
260/300

地下牢にて異変あり (初音視点)

 あれから半日程が過ぎたかのう。

 座敷牢は城の奥深くに設けられた離れにあり、窓もないので外から情報を得る手段も限られておる。

 しばらくは大人しくするつもりじゃが、心配事があるとすれば『あしなの件』よなぁ。

 兼宗カシュウ様は今すぐあしなを処刑するつもりはない、と思いたいが…。

 否、そのつもりがあるなら()()()()()()()()()()

 女中から聞いた話だと長い間、気を失っておったようじゃが、その程度で済ませてもらったと考えるべきじゃろう。

 そうなると父上の暴走が目下において最大の懸念かもしれぬ。

 なんぞ妙な勘違いを抱かれなければ良いのじゃが…。

 心配の種が尽きぬところで、城内が不審なほど静かな事に気付く。

 そういえば、先程まで甲斐甲斐かいがいしく世話を焼いてくれた女中達の姿が見えぬ。


「誰か、誰かおらんか。少し喉が渇いてしまってのう、茶を一杯所望したい」


 声を掛けたが返事はおろか、人の気配すら感じられない。


「…ほんに妙じゃの。

 まるで深夜みたいに静か――!?」


 その瞬間、下から突き上げるような音と衝撃に襲われた。

 天井から無数の埃が落下すると、再び辺りは静寂が包み込む。


「地震……では…ない!

 今のは爆発じゃ!

 場所は…地下…なぜそんな所で……まさか!?」


 城屋敷の構造は熟知しておる。

 今まで外へ出れなかった分、屋敷の中は自由に動けたからの。

 このような時に日頃の退屈しのぎが役に立つとは思わなんだわ。

 地下、そこは罪人を閉じ込めておく牢屋!

 あしなの身に何か異常な事が起きておるやもしれぬ。

 奴はよほど追い詰められないと、そうそうこんな無茶をする男ではない。

 だとしたら…。


「誰か! 地下牢で何が起きたのか見て参れ!

 おい!聞いておるのか!?」


 どれだけ騒いでも女中どころか護衛の兵すら駆けつけぬ状況に、遂に確信を得るに至る。


「これは明らかに異変じゃ!

 ここまで派手に事が起きておるのに、騒ぎや足音一つ聞こえてんなど――あり得ぬ!」


 城屋敷には多くの兵や女中、父上や兼宗カシュウ様までおるというに、誰も何の異常も感じておらぬとは考え難い。

 幸い…と言うべきか、座敷牢には鉄格子などなく、その気になればいつでも出れるが、父上の面目メンツを潰してしまう事にもなりかねん。

 どうする!? 一体どうすれば…ッ!


「…あぁぁあああ!! もぉぉぉおお!!

 考えるの面倒くせぇのじゃぁぁああ!!」


 金箔貼りのふすまを豪快に蹴り飛ばすと、そのまま地下牢へ向けて無人の廊下を駆け出す。

 意図的に足音を立てているにも関わらず、やはりワシの脱走を止めようとする者は現れなかった。

 そして長い廊下を曲がった直後、信じられない光景が双眸そうぼうに飛び込む。


「こ…これは! お前達…何があった!?

 しっかりするのじゃ!」


 城内の者が至る所で倒れておる!

 付近には湯飲みや酒瓶が落ちており、水を使った埋伏まいふくの毒である事は明白じゃった。

 皆、眠ったように倒れ伏し、呼び掛けても全く反応がない。

 死んではおらんが、強靭な鬼属きぞくの兵ですら昏倒させる程の毒とは…。


「つい先日も同じ症状の者を見た…。

 そうか! あの忍び…千代女ちよめの仕業か!」


 だとすれば先程の爆発も…。

 ――あしなが危ない!

 もはや、迷っている暇などない。

 あの女は兼宗カシュウ様と同等の危うさをはらんでおる。

 何をしでかすのか分からない危うさを!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ