帰るまでが遠足です!
「そういえばフグにも目蓋があったっけ。
いやはや、それにしても…珍しいというか…」
改めて、俺の知っている世界とは別なのだと思い知らされる。
更に本を読み進めていくと味の方は少し癖があり、調理次第で旨くも不味くもなるらしい。
「なるほど。
デカい頭とずんぐりした体はフナの特徴だな。
さて、どうやって美味しく頂くか悩み所だぞ」
フナといえば長期保存できる甘露煮が有名だが、この個体は流石に大き過ぎる。
材料となる醤油や砂糖はAwazonで揃えたとしても、これだけ大きいと水分も豊富なので、失敗する可能性が高い。
もし甘露煮に挑戦するなら、最初は小さい個体で試したいのだ。
「そんな訳で、キミはシンプルに焼きか煮付けにして食べさせてもらうよ」
折角ここまで足を運んだのだから、今日はもう少し食料を調達しておきたい。
釣った魚は放置しておくと短時間で痛んでしまう為、ホームに帰る時まで生かしておいた方が良い。
スマホからAwazonで購入したのはスカリ。
簡単に言えば網状のカゴで、生きたまま魚を入れておける釣り道具の一種だ。
「ここにマブナフナを入れて川の中に浸けておけば窒息して死ぬ事はない。よし、これで釣りを再開できるぞ」
その後も最高の釣り場を独占し続けるという、東京では考えられない贅沢な時間を過ごし、順調に釣果を重ねていく。
いつしか時が経つのも忘れた頃、スカリは様々な魚種で一杯に溢れていた。
「ちと調子に乗って釣り過ぎたかな。
うわ、重っったッ!」
余りにも至福だったせいか、徒歩で片道1時間という事実すら忘れて没頭してしまった。
釣った魚はどれも20~40cmのサイズで、全て食料として活用できれば当分は安心して暮らせる量だ。
「お陰で持ち運びが…こ、これは幸せの重さ!
絶対持ち帰って美味しく調理してやるからな!」
納竿時にAwazonで折り畳みバケツ2個を追加購入し、水を張ってから満杯のスカリを放り込むと、若干引く程の重量となってしまったが仕方ない。
俺は気合いを入れてバケツを持ち上げ、幼い狼が待つホームへ向けて帰宅を急ぐが、如何せん重過ぎる!
道中は何度も休憩を挟みながらも、俺は少々焦っていた。
その理由は出発前に懸念していた天気であり、そろそろ本格的に空模様が怪しくなっていたのだ。
「ヤッバ、夢中になってたな。
おっと、忘れちゃいけないぞっ…と」
肩や手を休める傍ら、近くに群生している植物に目を向けて探していると、比較的簡単に見つける事ができた。
笹に似た葉を持つ多年生の植物ジンショーガ。
香辛料とした料理の香り付けや生薬として古くから珍重され、乾燥させて瓶詰めにすれば常温で長期保存も可能な食材だ。
地中に埋まった根茎を見つけだすと一塊をポケットに入れ、無事に帰宅の途に着いた。
「た、ただいま~……。つ、疲れた……」
予想通りと言うべきか、小さな同居人は俺の姿を見るや飛びついて喜び、全力投球の労いペロペロで顔をなめ回す。
正直、やめてくれ!
ここまで心配してくれると本気で泣く。
「わ、分かった。分かったから!」
満面の笑顔で狼を引き離すと、ホームの外は濃密な夕闇と雨に包まれていた。
もし、ほんの少し到着が遅れていれば――次は気をつけなければならない。
自然の驚異は無防備な者、甘く見た者に対して決して寛容ではないのだから。
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ここまでのAwazonポイント収支
『灰汁洗剤を作成――1000ポイント』
『アオスジタケノコを採取――1000ポイント』
『初めての洗濯――1000ポイント』
『トライポッドを作成――1000ポイント』
『タケノコで保存食を作成――1000ポイント』
『サワグリの塩抜き――1000ポイント』
『竹で食器を作成――1000ポイント』
『マブナフナを釣り上げた――1000ポイント』
『ジンショーガを採取――1000ポイント』
以下を購入
『スカリ――1500ポイント』
『折り畳みバケツ2個――3000ポイント』
現在のAwazonポイント――306,900P