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感動の再開

「なんだよ!? 地震か!!」


 さっきから大きな揺れが頻発しているが、地震にしては少し妙だ。


「なぁ、ゴえもんさん。どう思う?」


 ……駄目だ、全く起き上がる気配がない。

 てゆうか、よくこの状況で寝ていられるな!

 一体どんな神経してんだ…。

 そもそも、コイツが居るって事は熊野だよな?

 だとするなら、初音の実家。

 上手くすれば合流できるかもしれない。

 行動を起こす前に、まずは今の時刻を知りたいのだが…。


「気を失ってたから時間の感覚が――そうだ!

 スマホ!! スマホはどこだ!?」


 上着やズボンのポケットを総当たりすると、馴染み深い形が指先に触れる。


「これは…あったぁ! 良かった……」


 ナイフが没収されていたのでスマホもと考えたが、この世界の住人にとってスマホはただの板か何かという認識だったのだろう。

 その甲斐があって無事で済んだ訳だ。

 これがあるのと無いのとでは雲泥の差。

 ようやく希望の光が見えてきたぞ!


「なんぞ妙案でも浮かんだって顔でさぁな、旦那」


 振り向くとゴえもんがこっちを…違う、スマホを見ていた。

 俺は奪われるのを警戒して後ずさるが、彼は軽快に笑って手のひらを振る。


「安心しておくんなせぇ。

 仮にも同居人から盗みはしませんぜ。

 それより、ここから抜け出す上手い手を一緒に考えやしょう。あっしの事はゴえもんと呼んでおくんなせぇ」


 ……良かったぁ。もし力ずくで迫られていたら、抵抗できる気がしなかった所だ。

 2人ならなんとか脱出できるかもしれない。

 そう思った矢先、穴蔵へと近付く何者かの足音が聞こえてくる。

 誰だ? 初音…か?


「…………」


 終始、ひょうひょう々として捉えどころのないゴえもんが、唇に指を当てるジェスチャーで何か伝えようとしていた。

 何だ? 何が起きようとしている?

 そうしている間にも足音は確実に近付き、明らかにここを目指しているのが分かると急に心拍数が跳ね上がった。


 ヤバい…この感覚、覚えがあるぞ……。

 音は…軽い。かなり小柄か女だ。

 歩幅は…短いが一定…やはり女か?

 嫌な予感がする……とても、嫌な予感が。


 奥の方では見張りの連中も気付いたのか、揉めているような音が聞こえる。


「なんだ? ここはお前のような者が来る場所ではない! 怪我をしたくなければ――」


 唐突に打ち切られた警告。

 その反面、足音は全く途切れず一直線に向かってくる!

 絶対におかしい…。

 見張りは訪問者を止めようとしていた。

 だが…。


「…………」


 ゴえもんは壁を指差し、手のひらを下に向けている。

 物凄い警戒心を肌で感じる。

 ここは言われた通り動くべきだろう。

 俺は近くの岩陰に移動して伏せたと同時に、暗闇から何かが投げ込まれた。


「ッ!? 伏せろぉぉおお!!!」


 何の事だか全然分からないが、態度を一変させたゴえもんの気迫に驚いて頭を抱えると、凄まじい爆発音と共に、鉄格子が派手に吹っ飛ぶ!!


「…ッゥ! ……ァァ!」


 狭い穴蔵に鳴り響く爆発音。

 しばらく耳鳴りに耐えていたが、黒煙の向こうから歩いてくる人影が目に入り、瞬間的に背筋が凍りつく。

 ボディラインを浮き立たせる黒の衣装。

 濡れた黒髪に部分的な朱のメッシュ。

 まさか、こんな短期間に再び出会うとは…。


「あはぁ……やっと……会えましたね……。

 わたしを……二度も退けた……愛しいひと


千代女ちよめ!」


 最悪だ、これ以上ない程に!

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