表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp! 【 完結】  作者: ちゃりネコ
第二部 二章 新たな仲間、新たな岐路
232/300

誰もいない決着 (初音視点)

 筆舌に尽くし難い速度で迫る地表。

 呪物に操られたじいが苦しまぬようにと、頭から地面に落下した衝撃は予想に反する物じゃった。

 ワシらは不透明な膜に被われ、辛うじて一命を取り留めたらしい。

 どういう訳か、ワシの周りを囲う膜だけが音もなく霧消むしょうすると、静かに地面へと降り立つ。


「この力は……ぐぶっ!」


 大量の吐血。

 己の口から漏れ出たというに、初めて見る光景に動揺せずにはいられなかった。

 体内に留めようとするが湧水のように溢れ、急速に失われる活力は立っている事すら叶わず、足元から崩れ落ちる。


女媧ジョカ…さま……どうして…」


 命をけた覚悟を邪魔されてしまい、その意味を問おうと目を向けると、状況は一変しておった。


『想定された分岐点を確認。定められたプロトコルに従い、システムへの侵入を実行します』


「な…にを……言…」


 明らかに様子がおかしい。

 表現する言葉は見つからぬが…絶対、いつもの女媧ジョカ様ではない!


『侵入――エラー――侵入――エラー――侵入…』


 これまでとは違う、空虚で無機質な声。

 意味不明な言葉を繰り返し、微動だにしなくなった女神に驚嘆するばかり。

 あの御方に関して、未知の部分が多かったのは認める。

 じゃが、いま目の前で起きておるのは全くの別物!

 難しい事は分からぬが――ワシの…いや、日ノ本の範疇はんちゅうにない領域なのは明白ぞ!


『侵入――――――ハッキングに成功。

 引き続き、第2プログラムを起動――』


 あしなときゃんぷをしておる間、随分と不可思議なモノに触れる機会に恵まれたが、この感じは飯綱いずなの自宅に近い雰囲気じゃ。


『第2、第3プログラム完了。

 システムは順次書き換えられます。

 想定される時間まで――』


「敵への……警戒が……甘いな……」


 異様な光景に目を奪われていた為か、ばくを解いたじいに気づくのが遅れてしまい、声を上げるよりも早く女媧ジョカ様の体を一閃する!


女媧ジョカさ……!?」


 我が目を疑わざるを得なかった。

 それは女神を手に掛けたじいも同じ!


「な……なんだ……貴様……何者だ!」


 正気を失った者でさえ動揺を隠せない。

 無理もなかろう…。

 の地にあまねく全てを斬るという話は決して虚言ではなく、神をも例外ではなかった。

 だが、女媧ジョカ様は胴から真っ二つにされたというに、まるで気にした様子もなく意味不明な独り言をつぶやき続けた。


『システムの一部改ざんに成功。

 シナリオの改変まで残り――』


何故なぜだ! 何故なぜ死なぬ!?」


 人智を超えた現象が理解を拒んだのか、それとも己の矜持きょうじが傷ついたのかは分からぬが、じいは見る陰もなく取り乱し、女媧ジョカ様の体を散々に切り刻む。


「あ、あ、貴女は…貴女様は一体……」


 痛みを忘れて女神に問う。

 女媧ジョカ様は――どう言えばよいのか…。

 全身バラバラに引き裂かれてもなお、それでも意識を保ったまま宙に浮き、見聞きした事もない文字のような物を身にまとっておられる、としか表現しようがない…。


『私は端末に過ぎません。

 けれど……貴方達と一緒にいて、旅をして、とても……充実した一時ひとときを過ごせたのです。なんだか私、変ですよね…』


「面妖な……は、放せぇ!」


 女媧ジョカ様のまとう文字が渦を巻き、取り乱したじいを有無も言わさず拘束する。


『今日まで夢のようでした。本当に…。

 貴方達と過ごした日々は、膨大なデータのどこを探しても見つかりません。私の…大切な、大切な思い出』


 胸を掻きむしる嫌な予感!

 この感じは…母上が亡くなられた時と似ておる!


女媧ジョカさ…ごぼっ…がっ! ぁ…」


 肺が絞り尽くされ、空気が漏れ出ていく。

 足元から血の気が引き、徐々に感覚と熱が失われていくのを実感した。

 あぁ、これまでじゃな…。


『お別れの時です。

 最後に、創造主様からのメッセージをお伝えいたします。――今度こそ、必ず君を救ってみせる』


 その言葉を口にした直後、女神は文字の集合体に身を変え、凄まじい竜巻となってじいを空高く舞い上げていく。

 数え切れない程の文字はあらゆる物を透過し、既に殆どの五感が失われていたのに、見た事のない景色、聞いた事のない音楽、触れた事のない刺激の全てをもたらした。


「よき……冥土めいどの…土産……ぞ…」


 今際いまわきわ、光なき世界の終わりで母上が微笑んでおられたのを、確かに感じた――。


  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


ここまでのAwazonポイント収支


『妖刀 村正むらまさを破壊――20000ポイント』


 現在のAwazonポイント――509,590P

 いよいよ物語の核心に迫ってまいりました。

 年内の完結に向けて執筆頑張ります。

 よろしければブックマーク及び、評価いただければ幸いです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ