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異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp! 【 完結】  作者: ちゃりネコ
第一部 一章 遭難と書いてソロキャンと読もう!
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貝の砂抜き術

 翌日の空も晴れ間を見せてくれたが昨日よりも少し風が出ており、僅かな湿り気を帯びた空気が素肌を刺激する。

 キャンプや登山に慣れ親しんだ者なら、何度も経験したであろう気圧の変化を敏感に感じ取っていた。


「この感じなら夕方……もしくは、夜まで持ってくれるかもしれん」


 あくまでも推測でしかないが、これまでのアウトドアによって培われた経験を頼りに、結構な確率で的中させてきた勘だ。

 風向きや気温で結果は多少前後するけれど、ある程度は行動の指針となるだろう。

 足元に目を落とすと、狼が俺の足にすり寄って甘えている。

 少しずつだが何を求めているのかが分かり、どうにも苦笑いしてしまう。


「お前も腹が減ったか。

 それじゃあ絶品スープで朝食としようか」


 嬉しそうに尻尾を振る狼の頭をで回し、早速とばかりに用意しておいたサワグリ入りのビニール袋を覗き込む。

 丸一日かけて砂抜きをしたのだが…どうなった?


「……んん? あちゃ~やっぱ雑過ぎだったか…」


 14匹のサワグリは全て生きてはいるものの、ビニール袋の底には殆ど砂がなく、期待した砂抜きの効果は得られなかった。

 本来なら水を張った容器に貝を入れ、吐き出した砂を再び吸い込まないように網を敷いておくのだが、やはり水を入れたビニール袋に放置しただけだと効果は薄いらしい。

 俺の表情から結果を察した狼が弱々しい声で鳴き、朝食は抜きなのかと無言の抗議を行う。


「待て待て、慌てるな~。

 俺にちゃんと考えがあるんだよ」


 ここで活躍するのがAwazonで購入したダッチオーブンだ。

 まずはサワグリが浸る程度に水を入れ、これをトライポッドに吊るして火に掛ける。

 注意すべき点は()()()()()()()()()()()()()

 時間はたっぷりあるのだ。

 貝同士が重ならないように、間隔を離してダッチオーブンに敷き詰めていく。


「フタを開けたまま貝をじっくりと観察するんだ。

 水温が徐々に上がるのを待って、貝の口が開いたら……ここだ!」


 タイミングを見極めてダッチオーブンをトライポッドから降ろし、地面に置いて観察すると……。


「ほら、貝が異常な水温に驚いて砂を吐き出してるだろ? この方法なら数分で砂抜きが完了するってワケさ」


 言葉の通じない狼に説明するのも変だが、実に行儀よく聞いていたので妙に丁寧に話し掛けてしまった。

 俺も大分、()()()()()()()()らしい。

 次々とサワグリを投入して砂抜きを完了させ、ようやく待望の朝食かと狼が期待の目を向ける。


「まだ中まで火が通ってないけど…お前なら大丈夫か。先に食っちまいなよ」


 ナイフで殻を剥いてやると、『待ってました』と言わんばかりに喜んで食べてくれた。

 あっという間に半分を平らげた狼は、包帯を着けたままの後ろ足を引きずってホームの奥へと消えていく。


「さて、次は俺の朝食を作らないと」


 自分より狼を優先する辺り、やはり犬バカに染まってしまったようだ。

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