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異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp! 【 完結】  作者: ちゃりネコ
第二部 二章 新たな仲間、新たな岐路
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誉れ (万治郎視点)

「待たせた……次」


 オレの…オレの友達ダチを殺しやがった!

 ギンレイは残った左の前足を精一杯まで伸ばして死んだ。

 一歩でも前へ…。

 ちょっとでもアニキに近い場所へ…。


「うあああああああ!!」


 もうゴチャゴチャ考えんのはヤメだ!

 感情に任せて叩きつけた木刀。

 クソ野郎は涼しい顔で真正面から受け止め、返す刀で喉元を狙う。

 オレは本能的にあごを引いて喉を守ると、左頬から入った刃が舌をかすめて抜けていく。

 この()()――狙い通りだぜ!


「……ほう……少しは……」


ばなずがよ!」


 奥歯でガッチリと噛み締めた刃先。

 開幕の一発でもう知ってんだよ、腕力だけならオレの方が上ってのがな!


「ばぁああああ!!」


 制限された腕の可動域を補う為、体ごと木刀を叩き込む。

 奴は柄で受け止めようとするが関係ねぇ!

 全体重を乗せた一撃が持ち手を振り切って柄を押し潰し、真下に位置する左肩に激突した。

 そのまま心臓までメリ込ませるつもりだったが、どういう訳かウンともスンとも動かねぇ。

 オレの方が力は上だってのに…どうなってやがんだ!


「猪めが……丹田たんでんの……使い方も……知ら!?」


「ばっだら何回なんがいでぼだだむだげだばああ!」


 刀を噛んだまま何度も叩き込んでいく。

 何度も、何度も…何度も何度でも!

 対する野郎は刀を引くのではなく、オレの喉を切り裂こうと満身の力で押し込む。

 動くたびに口が裂け、血が吹き出す。


ね! にやがべええ!!」


「……ぐぅ! ……むぅ!」


 手前ぇ、なんで死の床についたお袋のそばに居てやれなかった!?

 オマケに葬儀まで遅れやがってよぉ!

 なんなんだよ!

 そんなにも侍務めは大事だってのか!

 お袋や……オレよりもか!


「が……あぁ!」


 いつの間にか木刀は中程からポッキリと折れ、刀の柄は肩口に深くメリ込んでいた。

 だけど、まだ足りねぇ!

 まだコイツには言いてぇ文句が山程な!

 このまま殺して――。


「万……治……」


 思わず手を止めちまった。

 いや、勝手に止まったんだ…。

 その瞬間、引き抜かれた刃がオレの視界から消え、一直線に伸びた刀が喉を貫き、親父殿と目が合う。


「……見事なり」


 められた――生まれて初めて、親父殿がオレを!

 妙な気分だ…。

 あんなにもキレてたのによぉ。

 けど、変なんだよ。

 妙に温かくて…泣けてきやがる。


「万……治郎……」


 親父殿も泣いているだと?

 いや、そんなワケがねぇ。

 オレの…当方の親父殿は誰よりもつえぇ男なんだ!

 きっと……雨が降ってきただけさ――。


  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

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