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異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp! 【 完結】  作者: ちゃりネコ
第二部 二章 新たな仲間、新たな岐路
222/300

野盗の襲撃――結果は…お察し

 大満足の食事を終え、時刻は草木も眠る丑三うしみどき

 俺達は翌日に備えて早めの就寝に入り、無人の寂しい片田舎で一晩を過ごす事となった。


 吹きつける夜風が雲を運び、柔らかな月明かりを暗に拒絶する。

 草木をなびかかせる音に紛れ、いくつもの息遣いが見慣れぬであろうテントを囲う。

 宵闇よいやみに浮かぶ特徴的なシルエット。

 ただ一つの目的を共有した彼らには、どのように見えていたのだろうか…。


 一団を率いる者から無言の合図が送られ、またたく間に周囲に散らばる男達。

 目の前で揺れる未知の布は柔らかく、木綿でも絹でもない。

 数々の凶行に及んできた彼らでさえ、誰も見た事のない住居。

 少なからず動揺する手下へ向け、いらつきを覚えた首領は遂に白刃を抜き放つ。

 覚悟を決めた手下の一人が布地に刃を突き立てようとした矢先、恐るべき金切り音が闇夜に響く!

 突然の事態に慌てふためき、一斉に浮き足立つ野盗達。

 その瞬間――!


「ラッシャセだオラァアアア!!」


 咆哮ほうこうと共に、深夜の訪問者へ手荒な挨拶を済ませた万治郎。

 テントを引き裂いてぎ払われた一閃が野盗の脇腹を捉え、人間には到達不可能な高さまで吹っ飛ばす!

 空中浮遊からの着地失敗を皮切りに、万治郎は凶悪な木刀を振り回して次々に打ち倒していく。


「コイツら気づいてやが――ブダッァ!」


 首領と思われる男にアクセル全開のバギーが突っ込み、強制的に言葉をさえぎる。


「夜22時以降の会話は控えろ。

 キャンパーなら常識だろうが」


 ルールを守れないなら強制退去も辞さない構え。

 事前に野盗が出る噂を聞いてたのに、俺が何の準備もしてないワケがない。

 音の正体は大音量防犯ブザー。

 説明するまでもないが、内蔵されたピンを抜くと大きな音で知らせる道具だ。

 寝る前にテントの周囲に釣糸を張り巡らし、ピンに結んでおいたのが役に立ってくれた。


此奴こやつらは『きゃんぱー』では…まぁ、どちらでもよい。このワシが相手をしてやるゆえ冥土めいどの土産とせい」


「大人をナメんじゃあねぇぞ!

 このクソチ――」


 何故なぜ、人はこうも同じ過ちを繰り返すのか…。

 初音の地雷を踏み抜いた盗賊は砲弾と見紛みまがう頭突きを喰らい、特大ホームランばりの軌道を描いた末に、川を飛び越えた先で女媧ジョカ様が空気の膜で包み、どうにか地面との激突を免れたようだ。

 あれならギリのギリギリで生きてるだろう、多分…。


「バ…! や、やってられっかよ!」


 鬼属きぞくが持つ常識外れの力を目の当たりにした盗賊は戦意を失い、散り散りになって逃走を始めた。

 しかし、今回は相手が悪すぎたのだ。

 好戦的なヤンキーと鬼娘に喧嘩を売っておいて、旗色が悪化したから『ハイ、さようなら』など通じるハズがない。


「一人も逃がすかよ!」


 うなりを上げて振り抜かれた斬撃が野盗へ襲い掛かり、そのたびに数名が空を舞う。


「競争じゃ万治郎!

 勝った方が朝餉あさげの主菜を独り占めぞ!」


 初音の余計な一言がますます事態を悪化させ、ゲーム感覚でボコされていく野盗達。

 こうなってしまうと手がつけられず、オロオロとする女媧ジョカ様をなだめて気絶した者から順に縛り上げる。


「今回は出番を譲るのか?」


 倒壊したテントで熟睡するギンレイへ声を掛けるが、シベリアンハスキー並に成長した彼にとって、もはや人間の野盗など相手にならないという事なのだろう。

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