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異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp! 【 完結】  作者: ちゃりネコ
第二部 二章 新たな仲間、新たな岐路
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オワセヤマドリの丸焼き

 鶏肉と一言でいっても様々な種類が存在する。

 定番のにわとりの他に軍鶏しゃもはとかもすずめ、アヒルに七面鳥などなど。

 今まで色々な鶏肉を食べてきたけど、山鳥は初めての体験なので楽しみだ!

 不思議なガマ口によって荷物の制限がなくなり、大型の調理器具も難なく運べるようになったのは本当に助かる。


「あー、お前らも飯食うつもりなの?

 物を壊したり喧嘩けんかばっかしてんのに?

 ちょっとマジに図々しくない?」


「はい、申し訳も御座いません……ですじゃ」


 珍しく従順な態度を示す初音。

 夕食を人質に取られた鬼娘にとって、飯抜きの危機にひんしたともなれば、背に腹は代えられないという事なのだろう。


「……万治郎、お前は何やってんだよ?」


「男が示す最大級の謝罪、土下寝っす。

 アニキの怒りを買っちまった以上、覚悟は出来てまさあ! 如何様いかように、存分にヤキを入れてくだせぇ!」


 謝罪の仕方が逆にこえぇんだよ!

 地面にうつ伏せ状態となり、完全な無抵抗を全力で表しているらしいのだが、こうまでされると普通に引く。

 いや、ドン引きである。

 ぶっちゃけ関わりたくないとさえ思ってしまう一方、半壊したテントの中で身長190cmを超える特攻服ヤンキーが寝転がっているのは正直、すっげぇ邪魔なんだよ!

 さっきから何回も頭のフランスパンにつまずきそうになってて危ねーんだよ!


『もう、許してあげて…』


 隣では物憂ものうげな表情で訴える女媧ジョカ様と、本日最大の功労者(功労犬?)であるギンレイが悲しげに鼻を鳴らしている。

 両者からこうも心配そうな顔をされてしまうと、俺の方が悪者みたいじゃないか。


「はぁ、もう怒ってないから。今日は遅くなっちゃったし、山鳥を食べて早めに休もう」


「待ってました! そうと決まれば酒じゃ、酒!」


「おっしゃああ! これで手打ちだぜ!」


 無罪放免は早かったかもしれん…。

 そう思わせるには十分な程の豹変っぷりに、怒りを通り越して目まいすら覚えた。

 ダメだ、このままだとストレスで俺が死ぬ!


「も、もういい…。今夜はダッチオーブンを使った『あしな特製オワセヤマドリの丸焼き』を作ってみたぞ」


 全体が飴色に仕上がった山鳥の丸焼きはシンプルながらも、豊かな香りと出来立てを知らせる湯気を上げ、廃墟同然だったテント内の雰囲気を一変させた。


「おぉ、濃厚な甘辛い香り…!

 忘れもせぬ、これはヒメゴトミツバチの蜜に醤油を加えたんじゃな?」


「ああ、刷毛を使って丁寧に塗り重ねて焼いた。時間は掛かったけど、良い色合いに仕上がったよ」


 飯盒はんごうで炊いた米を配膳し、ギンレイには片方のモモ肉と内蔵や足先を盛り付けた。


「お前のお陰で良い夕飯になったよ」


 待ちきれなかったギンレイは豪快な食べっぷりで応え、ますます大きくなっていく体を震わせて喜ぶ。

 俺達もご相伴にあずかろうと熱々の身を切り分け、ローストされた身と皮を口に含む。


「おっほ、ハーブを使ってないのに…この香り! まるであゆみたいに内側まで染み入る香薫こうくん!」


 近くに落ちていたサオリヨシノの枝で軽くいぶしてみたのだが、これが大正解!

 野生動物が持つ独特の臭みを打ち消し、食材のポテンシャルを引き上げるのに一役買ってくれた。


「皮! パリッパリのウマウマじゃ!

 これだけで酒が進むの~う♪」


「外で食う飯が…こんなにも旨かったのか…」


 噛むごとに溢れてくる肉汁。

 表面を被う甘辛いソースは焚き火であぶられ、旨味を閉じ込めると共に抜群の歯応えも両立させる。

 山鳥の引き締まった肉も絶品で、鶏肉よりも遥かに弾力があって、肉を噛む喜びを存分に味わう。


「よいのう…。なんだか久しぶりじゃ」


 酔いしれる。

 まさに、言葉通りに旨い食事と酒を皆で囲う喜びを、再び教えられた気分だ。


  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

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