似た者同士の争い
「…………どうしてくれんの?」
「お、怒るほどの……ものじゃろうか…のう?」
Awazonで補修用のガムテープを購入して、どうにかギリ使える程度にはなったものの、新品だったティピーテントは見るも無惨な姿へと成り果てていた。
しかも、馬鹿力で雑にペグを打ち込んだので、殆どが折れ曲がって使い物にならない。
こちらもAwazonで追加購入して事なきを得たのだが、問題はそこではないのだ。
「そろそろ許してやっちゃどうですかい?
お嬢も悪気があったワケじゃねぇんだ。
小さい子にありがちな背伸びをしたかっただけさ。そうだろ、お嬢――ぶごォ!」
「ちいかわ? 背伸びとか言っちゃう子にはお仕置きが必要じゃのう」
擁護した万治郎の腹筋を見事なアッパーカットでブチ抜く。
クラスター爆弾の絨毯爆撃の如く、初音の地雷を踏みまくった彼の勇気は認めよう。
「このクソガキがぁあ上等だコラァアア!!」
反撃に転じた万治郎はガッツリ組み合い、唐突に鬼と人間の力比べが始まった。
鬼属の初音と互角に張り合うのも凄いけど、争っている内容は小学生と大差ないのが実に悲しい。
「はぁ~~、お前らと一緒だと一向に話が進まねー! そろそろ夕食だってのに、食材の調達もまだなんだぞ!」
「ウソじゃろ!?
お主…宿を出る時に色々準備しておったろ!
何故に食べる物がないんじゃ!」
猛然と抗議を口にされても困る。
持ってきた食料は米と調味料が主で、主菜となる物は現地の名産品や名物で補うつもりだったのだ。
しかし、周囲には宿どころか民家すら見当たらず、店買いなど望むべくもない。
「今夜はオニギリでも――ん? ギンレイ!
今までどこに…お、おぉ!?」
テント設営の少し前から姿を見せなかった愛犬は帰ってくるなり、自分よりふた回りも大きな鳥を引きずっていた。
『異世界の歩き方』によればオワセヤマドリという名の野鳥で、体は鮮やかなコバルトブルーの羽毛に被われ、翼から尾羽まで空色に染まった美しい羽が目を引く。
体長と同じ長さの尾羽は艶やかに輝き、思わず見惚れてしまう芸術品のようだ。
そして、肝心の味は――絶品と記載されている!
「うぉぉおおい! よくやった!
流石はワシ自慢の弟なり!」
「やるじゃねーか犬っころ!
それにしたって自称姉のダメさ加減はよぉ。
お陰で犬小屋みてぇなとこで寝るハメんなったのは、全部お前のせいだからな?」
ようやく収まったハズの喧嘩は、女媧様の仲裁が入るまで続いたのは言うまでもない。
「マジに頭が痛くなってきた…」
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