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異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp! 【 完結】  作者: ちゃりネコ
第二部 二章 新たな仲間、新たな岐路
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あしな、21歳にして人生を詰む

「別に気にする程でもあるまい?

 実家に居た頃のワシはいつも、あんな感じじゃったけどのう?」


「お前と一緒にすんな!」


 地方豪族の姫様と一般大学生を同じにしてもらっては困る。

 俺は生まれてからモテた事も、人気者になった事もないのだ。


「誰だって、何の前触れもなく有名人になってたら……どうすんだよコレ!?」


「今更オタオタ騒ぐンじゃねェ。

 町はお前らの噂で持ちきりなんだからよ。

 ほれ。この通り、本まで売ってたから買っといてやったぜ? いや~、久しぶりに行列に並んだわ~」


 …マジに理解が追いつかないんですけど?

 しかし、飯綱いずなが手渡した本を一目した途端、意識が飛ぶレベルで激しい目まいに襲われる。


「あしな×万治郎!?

 こ…ぉ…れ……春画しゅんがじゃねぇかよぉおお!」


 春画しゅんがとは所謂いわゆるエロ同人誌である。

 しかも、御婦人が好みそうなジャンルの――。


「お、おぉ……見てみよ、お鈴!

 なんと濃厚な…ほぉ、これは…いものじゃ!」


 どこら辺が?

 マジに言ってるんだとすれば、教育係の八兵衛さんは、泣いて俺にびるべきだろう。


「だ、駄目だよ初音ちゃん!

 こういう御本ごほんは大人になってからってお母さんが…………その…あー……うん、い!」


 ああ、完全に終わったわ…。

 初音の誘いにお鈴ちゃんも加わり、教育に悪影響が出そうな本に釘付けになったのもつか、超高速でお江さんの手が伸び、例の本を胸の谷間に仕舞い込む。


「オホン、これはアタシが預かっておきます。

 さぁ、朝餉あさげが冷める前にお持ちしますね~♪」


 すげぇ嬉しそうにしてる…。

 俺はレースに参加しただけなのに、どうして…何処どこでこうなった?


「おい、万治郎! 

 お前も黙ってないで、何か言ってやってくれ!」


「当方は別に気にしてないっす。

 むしろ、アニキと噂になれて光栄です!」


 本当にもうダメだ…。

 俺に残された道は、全てを忘却の彼方かなたに葬り去る事だけ。

 動悸どうきと息切れに耐え、食卓についた直後、飯綱いずなが一枚の紙を手渡す。


「…………見たくねぇ」


「借金の証文」


 スローモーションで崩れ落ちる俺。

 ここにきてストレートなのは本当に勘弁な?

 スポンジ状に穴が開いた胃では食欲など湧いてくるハズもなく、青白く変色した指先で証文を手に取る。


「金…………百両!?

 は? イミフ……はは、はははははは!」


 やっべぇ、頭のネジ飛んだわ。

 金百両ってナンボ?

 少なくとも、必死になって貯めた全財産より多いっぽいな~。


「あー、昨日の爆走劇レースで壊したもろもろ々っすね。

 商人は壊れた壁やら屋根を自前で直せますけど、町人はそうもいかないんで請求したみたいっすよ」


「おとがめ無しゆうたやんけ!?

 そんな…お前……お前も壊したろ!?

 なんで俺だけ借金してんだよ!」


 人一倍の度胸を備えたヤンキーは平然とした態度で言い放つ。


「当方もカネないんで。

 あ、勿論もちろん一緒に借金返させていただきやす!」


 朝食の味がしなかったのは言うまでもない。


  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

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