表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp! 【 完結】  作者: ちゃりネコ
第二部 二章 新たな仲間、新たな岐路
203/300

主人公、パンダになるってよ

 翌日、顔中にまとわりつくザラザラとした感触で目を覚ますと、視界を占領したギンレイが嬉しそうに鼻先を擦り付けてきた。

 絶好調のテンションで繰り出されるペロペロ攻撃を放っておけば、短時間の内に目鼻が無くなるまでナメ尽くされてしまうだろう。


「わぁっ…た。わか……から…おぁ……よ…!?」


 起きると布団ふとんの周りがエライ事になっていて驚く。


「ようやく起きたか。

 朝餉あさげの用意はとっくに出来ておるぞ。

 はよう顔を洗ってこい」

「おはようございます、若旦那さん。

 昨日はその……久しぶりに熱い走りを魅せて頂き、ありがとうございました」

「あしなさん、あしなさん!

 爆走劇れぇすとってもすごかったよ! 

 私もね、馬戯異バギイに乗ってみたいの!」

「聞いてくれよ! アニキの為に金箔貼りの特攻服トッコーを注文しといたぜ!」


 ずらりと勢揃いした面々は甲斐甲斐かいがいしくも朝の用意を整え、俺が起きるまで待っていたようだ。

 僅か一日で一変した状況に驚くが、それよりも遥かに違和感を抱いたのは、満面の笑みで一団に加わる万治郎の存在であった。

 コイツ、どさくさにまぎれて何て言った?

 金箔のアニキ?

 いや、そうじゃない!

 俺が金ピカの特攻服を着て歩くの?

 ……絶ッッ対、無理!


「ちょい待てや。

 いま、すぐ! キャンセルしてこい。

 つーか、なんでお前がここに居る?」


 左右を見渡して、誰に対して言われたのか懸命に探るヤンキー男。

 ガチにやってるっぽいのが逆に怖い。


「そういうボケは要らねーんだよ!

 お前に言ってんだよ万治郎!」


「まさか……当方に?」


 疑問符をつけたいのは俺の方だよ!

『ウソやん…』みたいな表情は心臓に悪いから本当にやめてくれる?

 心外とでも言いたげな表情を浮かべ、お鈴ちゃんになぐさめられるヤンキーの姿は漫才にしか見えない。


「そう邪険じゃけんにするモンじゃねェさ。

 コイツなりに考えた結果、アタシらに協力してくれるってンだからよ」


「男 万治郎、爆走劇レースに負けたからには潔く葦拿あしなアニキの舎弟として、粉骨砕身の覚悟で働く所存だぜ!」


「粉骨砕身の仕事が特攻服のオーダーなの?

 君、社会人向いてないって言われた事ない?」


 またしてもお鈴ちゃんになぐさめられる万治郎。

 既に持ちネタ化してんじゃねーか!

 未だかつてない頭痛を抱え、フラつく足取りで窓枠に手を添えると、外がいやに騒がしい事に気づく。


「なんだよ朝っぱらか……らぁ!?

 な、なんじゃこりゃー!!」


「おお! すげぇ…本当に生きてるぞ!」

「ヤッシャセッ! ヤッシャセッ!

 お次の宿はウチにヤッシャセッ!」

「きゃー♪ あしな様と万治郎さんが二人で同じ部屋にお泊まりしてるわ~!」


 ――ここは上野の動物園か?

 宿に面した通りには許容値をとっくに超えた人混みが押し寄せ、俺の姿を見るや大歓声が巻き起こる。

 さしずめ、俺は客寄せパンダといったところだろう。

 一瞬で表情が凍りつき、集まった町民達を刺激しないように、極めて慎重に窓を閉める。


「お、おお……お、おいぃぃいい!

 こ、この世のおわ…終わりだああああ!!」


「それ、めっちゃウケるわい!」


 膝を抱えた俺がそんなにも面白いか?

 ケラケラと笑う初音を見て、本気で殺意がいたのはここだけの話だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ