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異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp! 【 完結】  作者: ちゃりネコ
第二部 一章 この人数でもソロキャンと言いきる勇気編
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異世界レース、決着!

「どうしたぁ!? 息切れてんぜ!

 事故ジコってからのおぇは明らかおせぇ!

 だがよ、カタギにしたら喧嘩タイマン張っただけでもてぇしたもんよ」


「……ハッ! 先輩に気ぃ使ってんのか?

 それよか…爆走劇レースに集中しなよ。

 次…が、最後の通過地点なんだぜ!」


 万治郎の指摘を強気に返したが、自分でも体の不調にはとっくに気づいていた。

 つい先程、無理めのコースを果敢に攻めた結果、第四地点を目前にハンドル操作を誤り、商家の土蔵に突っ込んだばかり。

 バギーの方は奇跡的に無傷で済んだものの、座席から吹っ飛ばされた俺は衝突時に肺を損傷したらしく、呼吸をする度に激痛が走った。


「…普通なら再起不能だろうな」


 爆走劇レースでは死傷者が出る事も珍しくないという話は本当だ。

 本来なら即病院送りの重傷を負い、立ち上がる事すら望めないはずなのだが――今の俺はどれだけ負傷しても出血せず、絶対に死なない。

 しかし、痛みだけは常人と何ら変わらず、潰れた臓器の悲鳴が脈拍と共に伝わってくる。

 どうにか第四地点まで通過したが、呼吸困難によって酸欠に陥り、視界の大半はボヤけつつあった。

 既にハンドルにしがみついているのがやっとの状態であり、必死に追いすがる万治郎との距離は徐々に離されていく。


「もうすぐ、もうソコだぜ!

 第五も余裕で当方が頂く!

 ッパ、当方不敗と馬威駆バイクに敵は存在しねぇ!」


 万治郎に数秒差をつけられ、残すはスタート直後に通った長い直線を折り返して鳥居をくぐるのみ。

 だが、もはや集中力も尽きつつある中、逆転の可能性は極めて低いと言わざるを得ない…。


あがりにゃお江姐こうねぇさんが待ってる。

 当方にとって勝利の女神がなぁ!」


 ますます気勢を強める万治郎。

 そして、俺は遂に限界を迎えて意識が飛ぶかと思われた直前、透き通るような声が頭に響く。


此方こちらへ……あの娘が待ってるわ…』


 たった一言の短い言葉。

 けど、本物の女神は俺に味方してくれている!

 民家の軒先で佇む女媧ジョカ様の姿を視界の端に捉え、女神のおぼしが示した場所に目を向けると――。


「そこ通るの!? …マジかよ。

 だけど、もう()()()()()()!」


 俺は急ハンドルでコースを外れると、民家に立て掛けてあった材木板を一気に駆け登り、軒を連ねる長屋民家の屋根から観客を見下ろす。

 ここなら神宮まで一直線!

 アクセル全開でバギーを疾走させ、大量の瓦を巻き上げながら疾走する。

 万治郎は背後を振り返り、俺の姿が見えないので完全に油断しているようだ。

 瓦を踏み砕く振動は容赦なく内臓へダメージを与えていたが、ここまできたら気合いで押し切ってやる!


ねぇさん! お江姐こうねぇ…オレ、やったよ…。

 もう、お江姐こうねぇが二度と泣かなくても済むように…オレがアンタを守って――だ、誰だ手前テメぇ!?」


「あしなー! 負けたら許さぬぞー!!」


 ゴールの鳥居でチェッカーフラッグを振り回す初音の声が聞こえてくる!

 お江さんが待っていると思い込んでいた万治郎は面食らい、僅かに速度を落とした。

 これが最後のチャンスだ!


「いけぇえええええ!!」


 切り立つ屋根をジャンプ台に見立て、後先も考えずに宙へと繰り出すと、全ての雑音や観客はおろか、時間さえを置き去りにして鳥居へと突っ込む!

 誰もが息を飲む瞬間、ハナ差でゴールしたのは…。


「し、勝者――挑戦者、葦拿あしなー!!」


 飯綱いずなのコールが響き渡り、町は割れんばかりの大喝采と歓喜に揺れた!


  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

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