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異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp! 【 完結】  作者: ちゃりネコ
第二部 一章 この人数でもソロキャンと言いきる勇気編
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アイパーリーゼントの男、現る

「うそ!? お江姐さん、今日はいつもと違うくない? そのひとだれ? 誰なの? 教えてよ!」

「ヤッシャセッ!!

 …あ、お江姐さん! おはようございますッ!」

「!? ………ぅぅあぁぁ…お江さん…」

「お江ちゃんが男を連れてる!?

 ちょいと皆! ちょっと大変だよ!」

「おめでとう! 遂に……よかった…涙が…」


 町を歩けば次々と顔見知りと思われる人達が声を掛けてくるので、その度に足を止めて説明したりで一向に買い物が進まない。

 皆が笑顔で自分の事のみたいに喜び、声を掛けてくれる。

 これだけで、町の人達からどれだけ慕われる女性ひとなのかが分かる思いだ。


「若旦那さんに買い物まで手伝ってもらって申し訳ないです。あの…皆、悪気がある訳では…」


「え、えぇ…大丈夫。分かってますよ」


 それにしても、一体どれだけ知り合いがいるんだろうか?

 全ての町の人と挨拶したのではと思っていたが、まだまだ人の列は途切れず、これではらちが明かない。


「お江さん、こっちへ」


 そう言うと大通りから細い路地へお江さんの手を取り、人目を避けるように駆け出す。


「あの……」


 このままでは町中に妙な噂が広まってしまう。

 路地を駆け抜けた先は人通りも少なく、かなり歩きやすい印象を受けた。


「その…すいません、アタシの知り合いが…。ご迷惑だったでしょう?」


 少し走ったからだろう、お江さんは顔を紅潮させて謝罪の言葉を口にする。


「とんでもない。お江さんこそ俺なんかと噂になると困るんじゃないですか?」


「いえ…あの、その…」


 言い淀む姿は遠慮がちな様子で、初めて会った時は気っ風の良さを感じたのだが、今は随分と違った印象を受ける。

 意外と受け身な人なんだろうか?

 話の糸口を掴めば会話も弾むと考えた俺は、お江さんの草履ぞうりに注目すると僅かなほころびを見つけた。


「お江さん、草履が古くなってますね。

 良い機会なので買い換えませんか?」


 口ごもるお江さんの手を引き、近くの店を覗くと棚には豊富に女性用の物が並んでいる。


「色々ありますね、どうです?」


「え…あぁ、なんだか久しぶりです…。

 でも折角なので一つ買おうかな…」


 嬉しそうに草履を手に取って選ぶ様子から、少しずつ緊張の糸がほぐれていくのが分かり安心していると、お江さんの目が一点で止まっているのに気付いた。


 手にしようか迷っていたのは、上品な淡い白色の台に紅白の織柄鼻緒の草履だ。


「すいません、これをください」


 店員に声を掛けて即決で購入する。

 驚いた顔でこっちを見るお江さんに草履をプレゼントすると、彼女は心配するほど紅潮してしまった。


「普段使いにも良さそうですね。

 そろそろ宿のお使いに行きましょうか」


「……ひゃい」


 本当に可愛らしい人だな。

 それにしても…買う物多過ぎじゃね?

 塩と酒と味噌と…醤油? 他には…。

 本当にこんなに切らしているのか?

 履き物を替えたお江さんはずっと足元ばかり見ている。

 こんなにも喜んでくれると、買った方も自然と笑顔にさせてくれるんだな。

 …どこかの鬼娘と烏天狗からすてんぐも見習ってくれ…。

 叶いそうにない願いに頭を悩ませていると、人のまばらな通りのど真ん中で仁王立ちしている男に気づく。

 そこに居たのは、漫画『ビー・バップ・ハイスクール』に登場しそうな風貌ふうぼうの男。

190cmを超える特攻服を着たヤンキーは俺を視界に捉えるや、お手本みたいなメンチを切って寄越よこす。


「おぉぉおん!? 手前テメぇ……何処どこ國衆もんだぁ?

 朝っぱらから舎弟が寝惚ねぼけたこたぁ言ってっと、シバき散らしよったんが……こぉもイチビリ倒した奴ぁ初めて見よっと!」


「………………途中から全然わからん。

 お前、本当に日本人か?」


 額にビッシリと青筋を立てたヤンキーは、フランスパンみたいに突き出たアイパーリーゼントを震わせ、今にも怒りを爆発させようとしていた。

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