Awazonからの贈り物
初音は別世界の乗り物を夢中でイジリ回し、初めて嗅ぐ匂いに目を丸くするギンレイを前に、あれやこれやと自身の考察を披露する。
「あしな、あしな!
また『あわじょん』で珍妙な物を買うたのう!」
「いや、これは……まぁ…なんだ……。
レイホウシンロクを狩猟した事で、俺もキャンパーレベルがアップしたと言うか……なんか、そんな感じだ」
我ながらテキトー過ぎる理由付け。
こんなんで納得してくれるだろうか?
「れべるあっぷ! すごいぞ、あしな!」
アッハイ……。
もう、これで押し通すしかないんや……。
若干の目まいを感じつつ、納車仕立てのバギーに乗ってみるが中々良い。
バイクよりも安定感があるが、搭載されたエンジンは乗用車よりもずっと小さい。
随分前にキャンプ場に併設されたレジャー施設で乗った事があるけど、その時もミニカーを操作しているような感覚だった。
まさか、こうして異世界で再び乗る機会が巡ってくるとは…。
「ライトにクラクション、ウィンカー。
必要な物は一通り揃ってるみたいだ。
……ところで君は何しているんだ?」
見れば初音が後部座席に乗り込んでいる。
いや、二人乗りは可能みたいだけど、君には恐怖心とかないの?
「ここに乗ってどうするんじゃ?
なんだか馬みたいじゃのう」
ギンレイも俺達が列をなしてバギーに座る姿に興奮しているのか、周りを走りまくっている。
収拾がつかない事態に戸惑っていると、意外にも飯綱が助け舟を出してくれた。
「…ちょいと近場を走ってきたらどうだ?
今の内に必要なモンがありゃあ調達しとけ」
「あ、あぁ…それもそうだな」
飯綱の言う通り、サイダーを量産する上で発泡石を調達しておく必要があった。
近場の採取場所は歩いて一時間程だが、バギーならば大した距離ではないだろう。
採取も兼ねて、ちょっと試走してみるか。
「動かしてみるから掴まってろよ。
大丈夫だと思うが、間違っても俺の胴体を握り潰すんじゃないぞ?」
「動く!? こいつは生きておるのか!!」
どう説明するべきか全く思い付かないが、兎に角、動かせば分かってもらえると思う。
キックスターターのペダルを踏み込むと一発でエンジンが回り、鼓動を思わせる振動と共に、マフラーから白煙が舞う。
「…………!!」
初音は驚きで声も出ない様子。
俺も胴体が無事で安心する。
ギンレイは突然の事に驚き、ホームへ向けて逃げてしまった。
ゆっくりアクセルグリップを開けると徐々に車体は前へと進み、次第にタイヤは与えられたエネルギーを大地に刻みつける。
「昼食までには戻る」
手短に帰宅する時間帯だけを伝え、アクセル全開でホームを後にする。