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異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp! 【 完結】  作者: ちゃりネコ
第二部 一章 この人数でもソロキャンと言いきる勇気編
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熱々揚げたて、レイホウシンロクの鹿カツ

「しか・かつ、しか・かつ!」


 ちゃんと分かって言ってるのかな。

 それは置いとくとして、最初の一口めは何も付けずに食べてみよう。

 豆から作ったフレーク衣はパン粉よりも歯応えがあり、少しだけ不安のあった風味も違和感を感じなかった。

 口にした瞬間、耳に届く揚げ物特有の音。

 こんな自然の中で、親しみのある音に再び出会えた事が素直に嬉しい。

 まずはロース肉から味わうと、脂身の持つ甘さと赤身の歯応えがダイレクトに伝わってくる。

 同じ揚げ物であるトンカツを、何も付けずに食べるのが一番旨いと言う人の気持ちが分かる思いだ。


「じゅーしー! 新たな食の発見じゃ!」


「レイホウシンロクは俺の知ってる鹿肉よりも脂身が多いね。その分、揚げ物との相性も悪くないや」


 脂肪を蓄える性質の為なのか、通常の赤身よりも僅かに網目状のサシが入り、歯応えは想像していたよりも柔らかい。

 その一方、ヒレ肉は脂身が少ないが赤身自体がきめ細かい肉質で、上質な歯応えと旨味が感じられて、どちらも甲乙つけがたい旨さ。


「ワシはろーすの方が好みかのう」


 次は岩塩を付けてみたが、適度な塩分が加わった事で甘味がより一層引き立ち、素材の旨味が存分に活かされているという感じか。

 これだけでも十分に旨い。

 しかし、俺はここで最高・最強のダメ押し実行を決意する。


「これ以上なにをするんじゃ?

 今でも十分旨いというに」


 そう、確かに不満はない。

 だがしかし、この味を知ってしまえば底無し沼に足を取られるが如く、その魅力から抜け出すのは困難を極めるだろう。


 俺は用意していた竹皿を初音の前に置き、そこにある調味料を静かに勧めた。


「これは見た事のない…卵黄?」


 怖さ半分、興味半分といった初音は勧められるままに、トンカツを未知の調味料に潜らせて口に運ぶ。


「……これは!?」


 想像すらしなかったであろう衝撃が、味覚を通じて脳へと伝わっていく様子が明確に見て取れる。


「……完全にちぃとじゃろ。

 挙げ句にこんなおそれ多い物まで考案して、食材に対する敬意とかないんか?」


「だから俺じゃないって。てか、お前も俺と話す内にかなり毒されてきたな」


 初音が食事の感想とかけ離れた、奇妙な抗議をするのも無理はない。

 先程の調味料はご存知マヨネーズ。

 アレンジによっては素材の味を上書きしてしまう程の可能性を秘めた食卓のお供だ。


 岩塩、猪の脂身を溶かした油、カドデバナから作った酢、そしてミズサシシギの卵を合わせた素材から誕生した。

 こだわりのポイントは卵黄のみを使い、残った白身は湯煎ゆせんで固めた後に砕いて、歯応えを変化させた所だろうか。


「まよねーず……醤油とも味噌とも違う…。

 なんとも不思議な舌触りと味じゃがこれは癖になるのう~」


 子供はマヨネーズが大好き。

 いや、俺も好きだけど。

 思った通り、赤身の割合が多い鹿カツとの相性も抜群で、適度な塩気と酸味が食欲を刺激して、他にも様々な食べ物とマッチしそうだ。

 聞いた話だと刺身にも合うそうだが、機会があれば試してみようかな。


『どう? 飯綱いずな、美味しい?』


「……そこそこだナ」


 女媧ジョカ様はずっと飯綱いずなに寄り添って語りかけ、自分に配膳された分まで食べさせている。

 それどころか、女神に甘々なアーンしてもらえるとか――羨ましくて血涙モンだろ!

 しかし、ここで初音が何を思ったのか、余計な横槍を入れてしまう。


「未来少女の飯綱いずなちゃんは甘えん坊じゃのう。どれ、ここはぇが手ずから食わせてやろうぞ」


「うるせェ!

 気安く近寄るんじゃねェ、このドチビが!」


 あーあ、言っちゃった…。

 最大の禁句を口にした事でバトルが始まるかと思いきや、意外にも初音は落ち着いた様子で笑って済ませた……が、眉間に刻まれたシワと青筋が心境を物語る。


「ま…まぁまぁ、喧嘩けんかするなって!

 ほら、初音が作った酒でも飲んでみなよ」


 二人は縄張りを争う野良猫じみた気配を漂わせ、好物の酒を前にしてもなお、一触即発の雰囲気だ。

 そんなガキンチョ共を見かねたのか、なんと女媧ジョカ様が自ら酒を手に取り、竹製の御猪口おちょこに注いで差し出された。

 静静しずしずとした姿は恐ろしく妖艶で、焚き火に浮かび上がる巨大な異形の影も相まって、背筋が凍る程の幻想と愉悦ゆえつを同時に味わう。

 女神のアーンに続いて晩酌とか――現世における幸福の極みだろ!

 羨ましくて泣きそうになるわ!


「お、おぅ……仕方ねェな……」


「た、大神たいしんにそこまでされたなら……」


 女媧ジョカ様の勧杯けんぱいを断れるはずもなく、一応の仲直りをした二人。

 酒の投入によって鹿カツの消費は見る間に加速していき、相当な量を用意していたのにマジに足りるか心配しなければならない程だった。


「この滑らかな口当たり、いくらでも食べれそうじゃ~♪」


「すいません、本日はもうカンバンです」


 本日もあしな食堂は大盛況の内に閉店を迎え、いよいよ町での初商売を間近に控える。


  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 ここまでのAwazonポイント収支


『アマミカエデの樹液を採取――2000P』

『マツバヤニの葉を採取――1000P』

『メープルシロップを作成――10000P』

『サイダーを作成――2000P』

葉煙草はたばこを作成――10000P』

『ヒヨコムギを採取――1000P』


 以下を購入


『狩猟用くくり罠(5個)――16800ポイント』

『大容量ポリタンク(10個)――10000ポイント』

『麻袋――1000ポイント』


 現在のAwazonポイント――148,490P

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