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新たなる旅路

「…………待て待て待て、情報量が多過ぎだろ!」


 パンク寸前の頭を抱え、崩れ落ちそうな腰をギリッッギリの崖っぷちで踏ん張る。

 こんな時こそ深呼吸!

 際限なく上昇していく心拍数を抑えようと、努めて平静に深呼吸を繰り返す。

 ギンレイが健気にも、懸命に前足で体を支えてくれていたのが本当に助かった。

 マジに救われる思いだ。


「せ、整理しよう…。

 女媧ジョカは不死の理由が知りたくてついてきた。

 飯綱いずなは俺と同郷だけど、150年も先の未来から異世界に飛ばされたってワケだな?」


 噂の修験者が別世界の、しかも未来人と聞いて初音の瞳が一際に輝く。


「す、すごいぞ! 未来では羽が生えて飛べるようになるのかや!?」


「おうよ、美容整形みてェな感覚で羽も着けるし、寿命だって伸ばせるンだぜ!」


 空前絶後の驚きと言わざるを得ない…。

 だが、仮に翼を持った飯綱いずなを誰かが目撃したなら、人智を超えた存在として長く語り継がれるのは当然かもしれない。

 相当数の人が現人神あらひとがみの如く敬ったり、伝説の修験者に憧れを持ったりするのもうなずけるだろう。

 しかも、異世界歴20年の大ベテランなのだ。


「アタシにとっちゃ20年なンざ昼寝と大差ねェ時間さ。けどよ、それでも数年単位で見所のある奴がボチボチ訪ねてきてた。つーワケで、多少の顔パスは利かせてやンよ」


「そりゃ助かる!

 知らない世界でツテが有るのは心強いよ。

 にしてもだ、スマホを奪われたのは痛い。

『異世界の歩き方』にAwazonまで使えないとなると、相当キツい事になりそうだぞ…」


 クノイチが俺を襲った理由を思い出し、異世界における最大の強味を失った事実が重くのし掛かる。

 ところが、初音は上機嫌で御立派な胸を張って何かを手渡してきた。

 これは……まさか!?


「ふっふっふっ、ワシに抜かりなどあろうはずがないわ! こうして見事、『すまーほ』を賊から取り戻してやったのじゃ!」


「流石は初音大明神サマ! サイコー!!」


 最高の仕事っぷりに思わず拍手喝采を送る。

 それにしても、壁に大穴を開ける程の衝撃に4年も使ってるスマホが耐えてくれたのは奇跡だ。


「普通はちょっと落としただけで画面が割れたりするんだけど……耐衝撃カバーのお陰か?」


 ペラッペラのカバーを剥ぎ取って背面も確認したが、驚いた事にヒビどころか目新しい傷はひとつも付いてない。

 もっとも、異世界に来た頃から傷だらけだったので、本当の所はよく分からないんだけどさ。


「まぁ、ざーっと話は済ンだみてェだな。

 ま~ずは爺さンの情報を集めるとしようぜ」


「ああ、神奈備かんなびもりを出て町へ向かう。

 初音、それでいいな?」


 初音は腕組みの姿勢で大きく頷き、高らかに新たな旅路の始まりを宣言する。


「次なる目的はじいの捜索及び救出じゃ!

 まだ見ぬきゃんぷがワシらを待っておるぞ!」


 そうだ、まだ終わってない。

 新たな仲間、新たな目的を得て次の場所を目指して歩く。

 そして、誰かと食事を囲う楽しさを知ってしまったなら、もう孤独なソロキャンには戻れない。

 未だ胸中に残った謎と向き合う時間ならたっぷりある。

 じっくりと楽しんでいこうじゃないか。

 この――異世界のキャンプを!



 第一部完

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ここまでお読み頂いた皆様に感謝!

 作品を投稿する際に異世界モノか、それとも別ジャンルかで随分と迷いました。

 結局、異世界モノとしたのですが、作品のプロットはセルフリメイク前から存在していたので予定通りではあります。

(純粋な異世界を期待してた方々、スミマセン!)   


 第二部は『この人数でもソロキャンと言いきる勇気編』となります。

 ここまでの評価や感想、レビューなど頂ければ感謝の極みに御座います!

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