表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
153/300

ぶっ飛んだ修験者の名は…

「お前ら、アタシを訪ねて来たンじゃねぇのか?

 だったら、さっさと帰ンなよ。

 ココはそこいらの観光地とは違うンだぜ」


 人を小馬鹿にした態度の女は薄紅の鈴懸すずかけに本紫の結袈裟ゆいげさを身にまとい、山伏やまぶしの特徴でもある金の頭巾ときんを着けていた。


「格好なんてどーでもいいのさ。

 それより、アタシのキュ~トな顔をよく見とけ」


 どうしようもなく軽薄な性格は置いとくとして、確かに顔立ちはかなり整っている方だ。

 年齢は多分20歳前後で、大きな額に栗色のショートボブ。

 特徴的な三角形の眉毛に気の強そうなツリ目は、負けん気の強そうな性格をそのまま表しているようだ。

 身長は150cm程でスレンダーな体型をしており、何よりも目を引くのは背中の黒い翼だろう。

 左右一対の翼は自分の意思で動かせるのか、女のブラついた足に呼応して僅かに開閉している。

 どうやら本物らしいが、コイツが噂の修験者か?

 確かに()()()()してはいるが、そういう意味じゃないだろ…。

 水鳥に似た大きな翼を広げ、音もなく地上へと降り立つ姿は天使に見えなくもないが、性格が全てを台無しにしている感は否めない。


「アンタが修験者――だよな? 俺は…」


「あしなだろ?

 お前、結構な有名人だって知ってたか?

 いつも楽しませてもらってるぜ」


 おいおいおいおい!!

 主導権イニシアティブを取りたくても無理!

 どうして初対面のコイツが俺の名前を知ってんだ!?

 強張こわばる顔を汗を拭うふりで隠し、考え得るパターンを思い返す。

 絶対に何かトリックがあるはず!

 心理的劣勢のまま女媧ジョカとの一件を相談しようものなら、見返りに何を求めてくるのか予想もつかない。

 だが、必死の思考もむなしく、ニヤケづらの女は更に嫌な笑みを浮かべた。


「あー無駄無駄ァ!

 いくら考えたって分かりっこねぇよ。

 そこの女媧ジョカに取りかれたンだって?

 お前もツイてねぇ野郎だなぁ。ウケル~♪」


 やっべー、久しぶりにキレそうだわ。

 その上、ここを訪ねた理由まで知ってやがる。

 どうするべきか考えあぐねていた時、不意に頭の中に声が響く。


『怖いひと…』


 不穏な単語に反応して周囲の気配を探るが、神を怖がらせる程のモノなど谷底には見当たらない。

 もしや、目の前に居る修験者気取りの女が恐怖の対象なのか?

 チラリと横目で見ると、女は大きな溜め息をついて不機嫌そうに腕を組む。


「やれやれ、また来やがったのかよ。

 ここだとアタシまで巻き添えを食っちまう。

 仕方ねぇ。チョ~特別に家に入れてやるよ」


「来た? 初音達か!」


 不安な心に明かりが灯る。

 しかし、俺はどこまでも羽女と相性が悪いらしい。


ちげぇな、もっと厄介な奴さ…。

 あーそうそう、アタシの名前は飯綱いづなってンだ。

 親しみを込めて飯綱いづな様と呼べよな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ