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谷底に住まう者

「今度こそ……絶対に救ってみせる」


 ――誰を?


「決まってるだろ?

 俺が一番大切にしてたアイツだよ」


 ――だったらお前がやれよ。


「俺では……駄目だった。

 だから、今度はお前がやるんだ」


 ――俺が?


「あぁ、お前だって……なぁ?」


 ――そっか、次は…………俺の番か。


  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 白昼夢。

 いや、記憶――それも生前のモノか……。

 あの高さから落ちて命拾いなどするはずもなく、たとえ奇跡が起きようが一溜ひとたまりもないだろう。


「……異世界の次は地獄かよ」


 辺りは岩だらけの真っ暗闇なのに、点在する不思議な灯火によって、最低限の視界が確保されているのは素直に嬉しい。

 周囲には落下した際にブチけたリュックと荷物の残骸が散乱している。

 テントもランタンも、殆ど全ての物が原型も留めない程に壊れ、酷い有り様だ。

 けど、寝心地は案外悪くない。

 しかも、ふわふわの枕付きとは気が利いてる。


「寝て過ごせるなら地獄もそう悪くは――」


『………………』


 やっぱ地獄が良いトコなワケねぇよ。

 俺の目の前……と言うか、この状況シチュエーションはどう考えても詰んでるとしか思えない。

 アホみたく呑気のんきに枕~とかほざいてたのは女媧ジョカの太もも!

 あろう事か、倒れていた俺に膝枕とか…夢か?

 既に死々ヶシシがぶちで俺を守ってくれた一件から、少なくとも敵対する意思はないと薄々思ってはいたのだが――。


「あ……の、どういう……」


 どういう事態なのか理解が追いつかない。

 今まで物理的な手段は通用しなかったのに、どうやって肉体を…いや、そんな事はどうだっていい!

 俺はコイツに追われてたんだぞ!

 ……いや、いやいや……そうじゃない!

 あの高さから落ちて何故なぜ――俺は生きている!?

 絶対に死ぬはずだ!

 死んでなきゃ……逆に不自然だろ!


「もしかして……お前が…助け……」


 無言のまま俺を見下ろす女媧ジョカ

 僅かな希望を託した質問には答えず、膝枕の姿勢すら崩そうとはしない。

 見上げた谷底の空は暗闇にぽっかりと口を開け、見通せない現実に残った揺るぎがたい真実を語り掛けるようだった。


「答えてくれ!

 でないと……俺は…!」


 極めて不都合な事実が心を押し潰していく。

 心音は警笛の如く鳴り響き、脈拍はますます熱を帯びて身体中を駆け巡る。

 止めなく襲いくる火照りと悪寒を同時に味わい、廻る思考が酸素を求めて呼吸を急かす。

 やがて女媧ジョカの白い手が俺の額に置かれ、言葉を介さない意思が頭に流れ込む。


『違う』


 助かったのは女媧ジョカの力――ではない…。

 全身から血の気が引いていき、生きた心地すら感じられず、足元から地の底に沈むような冷気が広がっていく。


「俺は…………人間か…?」


 呟いた言葉が虚空に消え、答えを得ない迷いだけが心に木霊こだまする。

 どうすればいい?

 俺は…初音と一緒に居てもいいのだろうか…。

 女媧ジョカは何も答えてくれない。

 その時――。


「久しぶりの来客は随分と辛気臭ぇ野郎だな」


 誰かの声!

 思わず勢いよく身を起こそうとして女媧ジョカの胸にぶっかってしまう。

 なんて幸運――じゃなくて、マヌケなざまだ。


「さっきまでヘラってたのにゲンキンなもんだ。

 顔は悪かねぇんだけどよォ」


「だ、誰なんだよアンタ!」


 いつから居たのか全然気づけなかった。

 落ちた衝撃で頭がぶっ壊れていなかったとすれば、俺が見ている光景は現実なのだろう。

 背中に翼を生やした口の悪い女が俺と女媧ジョカを苦い顔で見下ろしていた。

 たびたび挟まれる主人公の白昼夢。

 今は意味不明かもですが、物語の根幹に関係する部分です。

 徐々に明かされていく秘密をお楽しみください~!

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