謎のアプリ『異世界の歩き方』
「なんだ……森が騒がしい…。
また厄介な野生動物でも現れたのか?」
昨夜の化け蛙を思い出すと今でも身震いしてしまう。
あれから気になって『異世界の歩き方』で調べても記述が見つからず、本当に未知の生物だったのだろう。
「にしてもだ、これだけ膨大な情報量に記載されてないなんて逆に不自然――なッ!?」
今まで気にも留めていなかった余白のページ。
そこに指が触れた瞬間、まるで水に絵の具を垂らしたように文字が浮かび上がる。
「『異世界の歩き方』に新しいページが!?
知らなかった……こうやって次々と情報が増えていくだなんて…」
あの化け蛙の正式名は『ヘンショウヒキガエル』と言い、特殊な器官によって光を屈折・蓄熱・吸光など様々な形で利用して獲物に忍び寄り、粘着性の長い舌で補食してしまう超希少種である。
「俺が出会った生物が……名前も含めて補足説明されている…」
『異世界の歩き方』は普通の本ではない。
言うまでもない事だが、スマホアプリを介して出し入れする手品みたいなモノだ。
もっとも、タネはどこを探しても絶対に見つからないけどな…。
前々から誰が編集しているのか疑問だったが、それがまさか自分自身だったとは思いもしなかった。
「――だけど……妙じゃないか?
俺は異世界の事なんて何も知らないのに、どうして最初から情報が載ってるんだ?」
理屈に合わない。
本来なら俺が本を手にした時点で、全てのページは真っ白のはず。
だが、実際には最初から相当量の情報が記載されており、お陰で今までやってこれたのだ。
間違いなく助けられた反面、どうしても矛盾が気になってしまう。
本を抱えたまま考え込んでいると、隣に座っていたギンレイが心配したのか、顔をなめて気遣ってくれた。
「ああ、心配すんなって。
別に困った事じゃないんだしさ」
そう、不具合ではない。
逆に言ってしまえば、都合が良すぎるのだ。
それが気掛かりなのだが…。
「ま、考えてもしゃーない!
気晴らしに釣りにでも行こうか」
今回はツチナマズの時とは違い、純粋に休日を楽しむ為の釣りだ。
もちろん、食料調達の意味も兼ねている。
初音達も探してくれてはいるけど、それ以上に食い扶持が増えたので、必要となる食料も多くなってしまうのは仕方がない。
まぁ、俺もギンレイも本調子とは言えないから、無理せず近場でのんびり釣るとしよう。
「おっと、昼飯は……ハチミツが少しとツチナマズの骨が残ってるな。ギンレイなら硬い骨も食べれるだろ?」
山積みしてあった骨を取り出すと、斧で食べやすい大きさに砕いてあげた。
バリバリと豪快な音を立てて噛み砕く様は、何度見ても野生の逞しさに感心してしまう。
これだけ普段からカルシウムを摂ってるのなら、そうそう骨折する事はないんだろうな。
「お前の親ならもっとスゴいんだろうな。
いつか……再会できる日が来るのを祈ってるよ」
元気に吠えて応えたギンレイ。
本当に見てあげて欲しい。
こんなにも可愛くて勇敢に育った姿を――。
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『ヘンショウヒキガエルを狩猟――50000P』
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『ホイッスル(3個)――750ポイント』
『ポータブルソーラー充電器(3セット)
――96000ポイント』
『スタンド型LED投光器(3セット)
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『洋弓――8000ポイント』
『矢(12本4セット)――8000ポイント』
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