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初音の気遣い

 翌朝、自分でも呆れるほど遅くまで寝てしまい、時刻は昼に差し掛かろうとしていた。

 昨夜は罪悪感で眠れるか不安だったものの、結果として極度の疲労によって気を失うようにして眠りについたそうだ。


「途中から記憶が曖昧なんだけど…俺、どうやってテントまで移動したんだ? 瞬間移動?」


「昼じゃというに寝惚ねぼけるでないわ。

 じ、じいが運んだに決まっておろう!

 後で礼を言っておけ!」


 どういうワケか、初音は御機嫌斜めな様子。

 八兵衛さんの所へ御礼を言いに行くと、彼も口数が少なくて妙に他人行儀というか…もう、ワケが分かんねーよ!

 足元を見るとギンレイがすり寄ってきて、甘えた声で俺を心配してくれた。


「よしよし。怪我の具合は…うん、骨は無事だな」


 ギンレイにとっても昨日は大変な一日だった。

 巨大ナマズに丸飲みにされ、お次は巨大カエルの舌で吹っ飛ばされたんだ。

 一見して元気に思えるけど、今日の移動は控えた方が良いだろう。


「そうなると食事か…。

 手っ取り早く何か――おぉ、どうしたんだ?」


 初音が俺の服の袖を引っ張っている。

 その表情は心なしか赤く見えるのだが…。


「爺もギンレイも…お、お主も怪我をしておる。

 今日はワシが食料を調達してくるゆえ、ゆ…ゆっくり休んでおるがよいわ!」


 なんで最後はキレ気味?

 確かに初音以外は皆、どこかしら怪我をして万全な状態とは言い難い。


「俺達への気遣きづかいには感謝してるよ。

 けど、八兵衛さんが何て言うかなぁ…」


 脳裏には初音ファーストを譲らない老人の姿が浮かび、全力で反対する光景が目に見えるようだ。

 ――しかし。


「当然ながら当方も御供おとも致す。

 葦拿あしなとギンレイは休んでおれ」


「ええ!?」


 意外と言う他ない。

 あの頑固一徹がんこいってつの八兵衛さんが、初音の考えを素直に受け入れるとは…一体、どういう風の吹き回しだ?

 つーか、彼自身も浅くない傷を足に負っているはずなのだが、それを指摘しても全く譲らず、結局初音と一緒に食料調達へと出掛けてしまった。


「仕方ないな。ま、折角のご厚意を無下むげにするのも悪いしさ、久しぶりの休日を満喫しますか」


 急な事だったので驚いた。

 とはいえ、体の節々が悲鳴を上げている現状、休ませてもらえるのは実に有り難い。

 激しく尻尾を振るギンレイをで回し、異世界に来て初めてとなる完全休暇を心から楽しませてもらおう。


  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

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