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底無し沼に落ちたら…どうなる!?

「あのバカたれ……ヘッドライトも着けずに、どこまで行っちまったんだ?」


 夜の森がどれほど暗いのか知りたい人は、両手で目を覆ってみるといい。

 目を開けても閉じても変わらないと感じたのなら正解だ。

 月明かりがなければマジに方向が分からず、あまりの暗さに自分が目を閉じているのではないかと錯覚する程の黒が視界を閉ざす。

 そんな状況で泥沼に向かって走り出せばどうなるのか――結果は火を見るよりも明らかだろう。


「あああああああしなぁぁぁああああ!!」


 聞こえる……アホの鬼っ娘さんが沼にハマりこんでいる姿が、この暗闇でもありありと目に浮かぶ。

 声のする方向へ向かうと、初音がギンレイを抱えて胸元まで沈もうとしている真っ最中さいちゅうであった。


「……なにしてんスか、初音さん……」


「しんきんぐなう!」


 なんで英語?

 日々の会話からすっかり別世界に毒された日ノ本人の語彙ごい力は置いとくとして、鬼の力をもってしても脱出できない底無し沼は本当に恐ろしい。

 貴重な教訓を得た俺はせめてもの礼として、ネットで聞きかじった知識を提供する。


「いいか、よく聞け~!

 兎に角()()()()()よ~!」


「たわけぇ!

 斯様かような時に落ち着けるかあ!」


 いや、ガチのアドバイスなんだが…。

 実際に底が無い沼なんてモノは存在せず、深さは数m程度しかないらしい。

 だが、落ちたショックで冷静さを失ってしまい、散々に暴れた結果、衰弱死してしまうのが主な死因なのだ。

 だから、沼に入り込んで足が抜けなくなった時、やってはいけないのが無理に抜け出そうとして体を激しく動かす事。

 そもそも体が沈んでしまう原因は足裏の狭い範囲に全体重が集中した結果、足元の泥に圧力が集中して粘度が下がり、更に深くハマり込んでしまう。

 なので、足が抜けなくなってしまったら、まずは落ち着いて圧力を分散すれば良い。


「初音ー! だったら泥の上に寝転ぶんだ!

 体全体で圧力を――」


「い、いやじゃぁああ!

 足だけでも気持ち悪いのに…こんな所で寝転べるか! 絶っっっっ対、いやじゃ!」


 もう半分埋まってるやんけ。

 しかし、どれだけさとしても初音は聞かず、このままではパニックを起こす危険性だってある。

 何よりも、ギンレイが初音の頭の上から悲痛な鳴き声を上げているのだ。


「これも愛犬の為、多少の出費もやむなし!」


 困った時はAwazonに頼ろう。

 購入したのは水辺のアクティビティとして子供から大人まで楽しめるアイテム、ウォーターバルーン。

 透明な巨大ビーチボールは二重構造となっており、人が中に入って水の上を自由に動き回れるという物。

 商品説明には底無し沼で使用しないでくださいとは書いてないので、多分問題ない……と思う。


「あああ! もう顔まで!

 こんな事なら死ぬ前に、くすねておいたハチミツを全部喰っておくんじゃったぁあああ!!」


 ここまでヒドい死に際の告白は他にないだろ…。

 サクッと風船を膨らませて恐る恐る沼に入ると思った通り、良い感じに浮いている!

 これなら安心して救助できるぞ。


はよはよう!

 沈む…! 絶世の美女が死んでしまうぞよ!」


 誰のことだよ?

 涙目のダメ鬼を救助する為、慎重に近寄ってバルーンの入口を初音の方へ向けると、ギンレイが慌てた様子で乗り込んできた。


「おぉ、よしよし! ゴメンなぁ…。

 怖かったでちゅね~。おい、早く入ってこい」


「ワシの扱い酷くないか!?

 本作の『ひろいん』じゃぞ!」


 ホントに誰のことだよ。

 ようやく救助された初音は全身泥々の有り様で、放置すれば邪風じゃふうが再発してしまうかもしれない。

 タイムロスは痛いが仕方ない。

 一旦ベースまで戻って、絶世の美女サマをドラム缶風呂にブチ込むとしよう。


「全身ドロドロでキモいのじゃあ~」


「自業自得だ。

 これに懲りたら次からは無茶するなよ」

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